はじめまして。江戸川病院(東京都江戸川区)放射線科部長の黒﨑弘正です。
みなさんのなかには、放射線科の医師というと、2019、21年に放映された人気テレビドラマ「ラジエーションハウス」を思い出す人がいると思います。
人気俳優の窪田正孝さん演じる主人公の診療放射線技師(以下=放射線技師)と本田翼さん演じるヒロインの放射線診断医を軸に、病院内の放射線診療チームの活躍を描いた医療ドラマです。
漫画が原作なので主人公が放射線技師と放射線診断医の資格を持っているという、現実にはありえない設定ではありますが、監修が現職の医師ということで現場の雰囲気はリアルな一面もあったと聞いています。
そのせいか、ドラマが放映されていた当時は、ドラマの内容が実際の医療現場で行われているかのように思う患者さんが大勢いました。
ですから、「放射線技師の方が正確な診断ができるのではないか」「新人の放射線医師より技師の方が信頼できるのでは」といった疑問をぶつけられることも多々ありました。
むろん、これは間違いです。そもそも放射線技師と放射線診断医、それに私が務めている放射線治療医とは役割が異なります。同じ職種同士なら優劣がわかることもあるでしょう。しかし、異なる職種ではその差を比べることはできません。
では、この3者にはどんな役割があるのでしょうか?
放射線技師は医師の指示のもと画像診断や治療のために機器を操作して放射線照射するのが仕事で、診断はできません。病気が疑われる部分を「がんです」「炎症です」「結核です」といった鑑別診断を行うのが放射線診断医の仕事です。放射線治療医は画像だけでなく診察して、悪性腫瘍が体のどこまで及んでいるのか、などを見極めてどのように治療していくかを考え、治療計画を作り、診察することが仕事となります。