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米国人の平均寿命が3年連続で下降…他の先進国に比べてなぜ短い?

高い医療費がネックに(C)iStock
高い医療費がネックに(C)iStock

 アメリカ人の平均寿命が3年連続で前年を下回りました。しかも76歳という寿命は、他の先進国に比べずっと短いことが話題になっています。

 医学誌ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・メディカル・アソシエーションに掲載された調査によれば、寿命が縮まった最大の理由はコロナ禍です。しかしそれ以上に注目されたのは、日本を始め先進国の平均寿命が軒並み80歳を超えているのに比べ、アメリカはずっと短いことです。

 世界でトップクラスの医療先進国アメリカは、医療に使われるお金も世界一です。にもかかわらず、予防医療が充実しているとは決して言えません。

 まず国民皆保険でなく、国民の8%が医療保険を持っていません。たとえ保険があっても、高い医療費が検査や早期治療を受けることを難しくしています。医療への普遍的なアクセスが不足しているために、死亡率が上がり、平均寿命が短くなっていると、米国立衛生研究所は指摘しています。

 もう1つ、ジャーナルが強調しているのは、女性79歳に比べ男性73歳と、男女の差がさらに広がったことです。

 男女でなぜこれほど差があるのか? 慢性疾患に対し男性の方が弱いという理由だけでは説明できないと、専門家は述べています。

 男女別の死因を見ると、男性はオピオイド系麻薬、メンタル・ヘルス、慢性代謝疾患による死亡率が女性よりも高いことがわかります。この傾向には、男性が助けを必要な状況でもそれを求めることが難しい。つまり男性特有の社会文化的行動規範が影響しているという専門家もいます。

 さらに注目すべきは、寿命を引き下げているのが、黒人男性だということです。

 アフリカ系アメリカ人男性の平均寿命は61.5歳で、全体平均と比べて10歳以上も短くなっています。この差が差別と関係があることは、人種と寿命の研究を待たずとも想像できるでしょう。

 ところで、実はアメリカの男女の寿命の差が6年というのは、日本と全く同じです。しかし日本人の平均寿命は女性87歳、男性81歳。アメリカ人から見ると驚くべき長寿なのは間違いありません。

シェリー めぐみ

シェリー めぐみ

NYハーレムから、激動のアメリカをレポートするジャーナリスト。 ダイバーシティと人種問題、次世代を切りひらくZ世代、変貌するアメリカ政治が得意分野。 早稲稲田大学政経学部卒業後1991年NYに移住、FMラジオディレクターとしてニュース/エンタメ番組を手がけるかたわら、ロッキンオンなどの音楽誌に寄稿。メアリー・J・ブライジ、マライア・キャリー、ハービー・ハンコックなど大物ミュージシャンをはじめ、インタビューした相手は2000人を超える。現在フリージャーナリストとして、ラジオ、新聞、ウェブ媒体にて、政治、社会、エンタメなどジャンルを自由自在に横断し、一歩踏みこんだ情報を届けている。 2019年、ミレニアルとZ世代が本音で未来を語る座談会プロジェクト「NYフューチャーラボ」を立ち上げ、最先端を走り続けている。 ホームページURL: https://megumedia.com

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