人の健康状態に関する世界的な研究(世界の疾病負担研究)によれば、感染症以外の病気で亡くなった人のうち、約3割は食事の偏りが原因だったと見積もっています。特に脂質(脂肪分)や糖質を過剰に摂取することは死亡リスクの増加と関連していることが知られています。
食習慣を改善するために、まずは食事制限に対する意識を高めることが必要です。しかし、食事制限に対する意識と食習慣や健康状態に与える影響について検討した研究報告はほとんどありませんでした。そんな中、食事制限に対する意識と死亡リスクの関連性を検討した研究論文が、日本疫学会誌の電子版に、2023年11月4日付で掲載されました。
この研究では、35~69歳の日本人5万8772人(男性2万7294人)が対象となりました。食事制限に対する意識を評価するため、研究参加者は摂取カロリー(エネルギー量)、脂肪、甘い食べ物の摂取を避けているかどうかを尋ねられ、「はい」または「いいえ」で回答しています。「はい」と答えた人は、実際の食事制限というよりも、食事制限に対する意識が高いと判定されました。
11年にわたる追跡調査の結果、脂質に関する食事制限を意識している女性では、死亡リスクが27%、統計学的にも有意に低下しました。この関連性は脂質の摂取量が減ったことによる影響というよりは、食事制限の意識がもたらした健康に対する全体的な行動変化によるものであった可能性が示されています。
ただ、摂取カロリーや甘い食べ物の摂取を制限する意識の高さは、死亡リスクの低下とは関連していませんでした。論文著者らは「食事制限の意識が死亡リスクに及ぼす影響は限定的であった」と結論しています。
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