「老化は病気である」──。近年、こうした主張をする研究者が増えている。
遺伝子研究などの進展で、かつては夢物語だった「不老不死」が現実的なものになりつつある。
実際、米国では老化を「治せる病気」としてとらえる動きが進んでいて、莫大な資金を集めて老化を止めるだけでなく、若返らせる研究が盛んに行われている。
日本でも「老化細胞を除去して健康寿命を延伸する」プログラムが進行し、最近開催された医師の学術集会の演題として「老化は制御可能か」が取り上げられた。
すでに、2型糖尿病の治療薬であるメトホルミンを使用した抗加齢研究や年老いたマウスと若いマウスを手術で結合させて血液循環させることで年老いたマウスを若返らせるパラバイオーシス、種類の異なる老化細胞を取り除く薬の開発などが世界中で行われている。
しかし、そんな研究をしなくても、1947年時点で男性50.06歳、女性53.96歳だった日本人の平均寿命は、2021年には男性81.47歳、女性87.57歳と大幅に延びている。
これは生活環境の改善などで若い時代に死ぬ人が減ったのが原因といわれたが、75歳時点での平均余命にしても、1947年の男性6.09年、女性7.03年に対して、2021年は男性12.42年、女性16.08年と倍近く延びている。
生物学的寿命まで延ばしてまで、長生きすることに意味があるのか?
都内の医学研究者で医師のひとりが言う。
「今後出現するであろう、長生きする技術は一握りの莫大な資金を持っている人だけが享受できる技術になる。いまでも良い薬は金持ちしか使えなくなりつつあるのに、それが助長されることに意味はないのではないか。それは誰しもある年齢になれば死ぬという公平感を失わせることになる。いずれ長寿社会や医療のあり方について真剣に議論しなければならない時代が来るのではないか」
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