新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)には、めまい、頭痛、味覚異常、倦怠感など、さまざまな症状が知られています。また、新型コロナウイルスに感染すると、脳梗塞を発症しやすくなる可能性も報告されています。
最近の研究では、新型コロナウイルスの感染が、脳の構造に変化をもたらす可能性も指摘されており、罹患後症状との関連性に関心が集まっていました。そんな中、新型コロナウイルス感染症と脳の構造変化について調査した研究論文が、米国医師会のオープンアクセスジャーナルに、2023年11月30日付で掲載されました。
中国で行われたこの研究では、新型コロナウイルスのオミクロン変異株に感染した61人の男性(平均43.1歳)が対象となりました。被験者のうち、新型コロナウイルスワクチンを1~2回接種していた人は29人、3回接種していた人は17人、ワクチンの接種状況を報告しなかった人は15人でした。
被験者は、MRI(磁気共鳴画像)と呼ばれる装置による脳の画像検査を受け、オミクロン変異株に感染する前と後で、脳の構造が比較されました。
その結果、オミクロン変異株に感染する前と比べて、感染した後では、左側の「楔前部」(大脳の内側面にあるしわの盛り上がった場所)と呼ばれる部位が2.6~2.7ミリ、右側の後頭部が2.7~2.8ミリ、いずれも統計学的にも有意に減少していました。また、発熱があった人では、発熱がなかった人に比べて、右側頭頂部の脳のしわの溝の深さが3.9~4.8ミリ、統計学的にも有意に減少していました。
論文著者らは、「オミクロン変異株が認知機能や情動に与える影響について、そのメカニズムを考えるうえで新たな視点を提供する知見」と結論しています。