花粉症とドライアイの併発はどちらの症状も悪化させる…「アレルサーチ」で判明

花粉症患者の半数はドライアイ症状を併発
花粉症患者の半数はドライアイ症状を併発

 年が明けて1月に入ると、花粉症シーズンに向けて対策を始める人も少なくない。花粉症では目の「かゆみ」や「しょぼしょぼする」といった症状に悩まされる人が多い。今年10月、順天堂大学が行った研究で、花粉症がある人のうち約半数は「ドライアイ」症状を併発していたことが明らかになった。併発するとどんな問題があるのか、研究を行った同大大学院医学研究科眼科学講座の猪俣武範氏に聞いた。

「今回、花粉症研究を目的として開発したスマートフォンアプリ『アレルサーチ(R)』を用いて1万1284人の方の年齢や性別、喫煙習慣や生活習慣、花粉症やドライアイの症状といったデータを解析したところ、花粉症患者9041人のうち、約半数である4429人がドライアイを併発し、さらにドライアイ症状が重症であるほど、花粉症の症状も重症化していることが分かりました」

 さらに、併発していた人の特徴を解析すると、女性、低BMI、治療中の高血圧、血液疾患・膠原病・心疾患・肝疾患・呼吸器疾患の既往歴のほか、アトピー性皮膚炎、トマトアレルギー、現在および過去の精神疾患、ペットの飼育、花粉症の季節におけるコンタクトレンズの装用中断歴、現在のコンタクトレンズの装用、喫煙習慣、6時間未満の睡眠時間がリスク因子として特定されたという。

「今回の研究で分かったリスク因子がなぜ両者を併発させる要因になるのかについては現段階では分かりません。ただ、アトピー性皮膚炎であれば皮膚科で治療を受けたり、喫煙習慣があれば禁煙したり、睡眠時間が短ければ6時間以上の睡眠時間を確保するといった生活習慣の改善で、併発を予防できる可能性が高いのではないかと考えられます」

 毎年、冬から春先にかけて猛威をふるう「花粉症」は国内で約3000万人が罹患している免疫アレルギー性疾患だ。くしゃみや鼻水、鼻づまりといった鼻の症状をはじめ、喉の痛み、花粉が目の粘膜に付着すると目のかゆみや充血、乾燥感や異物感といったアレルギー性結膜炎を引き起こす。

 一方、「ドライアイ」は目の乾燥感のほか、かゆみや充血といった花粉症に似た症状がみられる。これまでドライアイは加齢が大きな原因のひとつだったが、近年、その傾向が変わりつつあるという。

「急激なデジタル化に伴い、パソコンやスマートフォンを眺める時間が増えています。そうすると、まばたきの回数が減少し、目の乾燥を引き起こします。ドライアイの患者は年々増加し、その数は国内に2000万人を超えるといわれています」

■診療や治療が分かれているのが現状

 なかでも花粉症の原因のうち約7割を占めるスギ花粉とドライアイは、どちらも空気が乾燥した春に重複して発症しやすい。併発すると、目に入った花粉を涙で十分に洗い流せず、花粉は目の中に長時間とどまって花粉症の症状を強める。さらに、アレルギー性結膜炎で結膜に炎症が起こると涙に含まれる成分が変化したり、涙が目の表面にとどまらなくなりドライアイも悪化させるといった悪循環を招くのだ。

「実際、ドライアイと花粉症によるアレルギー性結膜炎は、コンタクトレンズの装着中断の原因の大部分を占め、どちらもQOLを低下させる要因になるのです」

 ドライアイと花粉症はこれほど深く関係しているといえるが、眼科と耳鼻咽喉科など、それぞれの診療科に分かれて治療が行われているのが現状だ。

「アレルサーチを用いることで、これまで難しいとされていた診療科を横断したデータの収集ができました。これを基に診療科の垣根を越えた診療が可能になれば、両者の治療効果が高まるのではと考えています」

 併発させて苦しまないためにも、今日から生活習慣の改善に努めたい。

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