寒かったり暖かったり…疲れが取れない「寒暖差疲労」に要注意

【寒暖差疲労チェックシート】
【寒暖差疲労チェックシート】

 気温の変動が大きい。グッと冷え込んだかと思ったら、12月とは思えぬ暖かい日もある。こういう時に注意したいのが「寒暖差疲労」だ。寒暖差疲労外来を開く「せたがや内科・神経内科クリニック」の久手堅司院長に聞いた。

 まずは、久手堅院長による「寒暖差疲労チェックシート」(表)を見てほしい。1つでも該当するようなら、寒暖差疲労を起こしやすいと考えた方がいい。

「寒暖差疲労とは、寒い・暑いの気温差が大きい時に生じる不調を総じて指しています。前日との気温差、朝夜と日中の気温差、室内外の気温差などが7度以上ある場合に起こりやすい」(久手堅院長=以下同)

 人間は、体温を36~37度に保つ必要がある。そのため、気温の変化に対して自律神経が働き、体内を一定の状況にしようとする。

「寒くなると体温が下がりますが、下がり過ぎると生命維持が難しくなり体に悪影響を与える。そこで末梢での血管が収縮し、熱を体から逃がさないようにします。一方で、体温が上がり過ぎるのも、体には悪影響。高温の状態が続くと細胞へのダメージが大きくなるからです。今度は末梢血管が拡張し、皮膚で熱交換を行います。これで不十分であれば、汗をかいて、その気化熱で体温を下げます」

 寒暖差への対応は、常に行われているが、寒暖差が7度以上になると、体温調整に使われるエネルギー消費が大きくなり、不調が出やすくなる。

「今年は秋になっても夏日を思わせる日が続き、ところが一転して急激に寒くなった。それが続けばまだいいのですが、11月、12月だというのに、気温が高くなる日がある。すると、自律神経が働いて体内を一定の状況にするのにエネルギーをたくさん使い、疲労が蓄積するのです。寒暖差疲労という名前の通り、8割くらいが全身倦怠感を訴えます。そこに、自律神経の不調による冷え、頭痛、腹痛、胃腸障害、首こり、肩こり、めまい、月経痛、イライラや不安など、さまざまな症状が加わる」

■放置すると不調が慢性化する

 現代人は、寒暖差疲労を起こしやすい状況にあるという。スマホやパソコンの長時間使用が原因だ。

「スマホは画面が小さく、うつむき姿勢を取りがち。人間の頭は4~6キロと重く、長時間のうつむき姿勢によって姿勢が悪くなり、骨格が歪みます。自律神経は脳と脊髄から始まり、各臓器や器官に分布していく神経で、骨格が歪むと、自律神経の自然な伝達ルートが妨げられてしまいます。結果、自律神経の働きが悪くなり、気温の変化にもうまく対応できなくなってしまうのです」 

 エアコンが効いて温度が一定に保たれた部屋で一日の大半を過ごすのも、寒暖差疲労の起こしやすさにつながる。気温の変化への対応力の低下につながるからだ。

「寒暖差疲労があっても、命に関わることはありません。しかし、疲労や不調が慢性化してしまう。当外来には、そういった患者さんがたくさん来ています」

 ひどい症状の人には漢方薬などを勧めるが、寒暖差疲労対策の基本は生活習慣の改善だ。久手堅院長も実践しているという。

「スマホやパソコンの長時間使用は避ける。私は1時間くらいパソコンで仕事をしたら、伸びをしたりストレッチをしたり、椅子から立ち上がって少し歩いたりします」

 冬の寒暖差疲労対策では、体を冷やすものを取り過ぎないようにする。

「生野菜をサラダで食べるよりは、火を通した調理法が望ましい。アイスよりホットにし、体を冷やすアルコールやカフェインは控えめにする」

 寒暖差疲労であっても、通常の疲労と同様、その解消に睡眠の質が大きく関係していることは変わらない。

「私はベッドから手の届く範囲にはスマホを置かないようにしています。スマホのブルーライトは睡眠の質を低下させる。『時計代わりにしているから』と言う患者さんがよくいるんですが、スマホではなく目覚まし時計に。それだけでも随分と睡眠の質が変わります」

 入浴をして体をゆっくり温める。ただし、寝る90分前には入浴を済ませよう。入浴で高まった交感神経が、副交感神経に切り替わるまでそれくらい時間がかかる。自然と眠りのスイッチが入る。

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