年末年始の「風邪」「胃腸トラブル」「疲労感」に役立つ漢方薬はこれだ

帰省ラッシュでヘトヘト…
帰省ラッシュでヘトヘト…(C)日刊ゲンダイ

 仕事の忙しさに加え、忘年会続きや自宅の大掃除、帰省……。無理をして正月休みになった途端、体調を崩す人もいるはず。特に多い風邪、胃腸トラブル、疲労感に対し常備しておきたい漢方薬を、日本医学柔整鍼灸専門学校の鍼灸学科専任教員である王瑞霞さんに聞いた。

「風邪は東洋医学では、寒性風邪、熱性風邪、その他の3種類に大別できます。自分や家族が普段風邪をひくとき、どのタイプになりやすいかをチェックし、漢方薬を用意しましょう」

■風邪

【寒性風邪】

 ゾクゾク感が強く、頭痛、関節の痛み、くしゃみ、透明の鼻水が特徴。よく効くのが葛根湯(かっこんとう)と桂枝湯(けいしとう)だ。

「葛根湯は普段から体力があり、外見的に筋肉がぎっしりしている人が対象です。飲み方のポイントは、ゾクゾクを感じたらすぐに飲み、汗をかいて症状が軽快したら、それ以上飲み続けないこと。体表を温める作用が強いため、必要以上に服用して汗をかき過ぎると、体力を消耗してしまう可能性があります」

 桂枝湯は、虚弱体質で寒がりの人に向いている。服用後、暖かい布団に入り体を温めると、より効果的だ。

 なお寒性風邪は、進行すると熱性風邪に転じることがある。その場合は熱性風邪の漢方薬を。

【熱性風邪】

 発熱が強く、寒けが弱い。喉の渇き、腫れ、痛み、黄色く粘り気のある鼻水や痰が見られる。駆風解毒湯(くふうげどくとう)や銀翹散(ぎんぎょうさん)、銀翹解毒散(ぎんぎょうげどくさん)が有効だ。

「解熱・解毒の働きがあり、喉の炎症による症状が顕著に出ている場合に適応します。内服する時は、食後30分ほど経ってから。“冷やす生薬”が多数配合されており、空腹時に飲むと胃にさわる恐れがあります」

 駆風解毒湯はトローチタイプもある。喉の渇きや違和感があったら、まずはトローチタイプからケアするといい。

【その他】

 胃がむかつき食欲がない。頭痛や体の重だるさ、口の中の粘つきがある場合は、柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)。   
 
 空咳や痰が喉に絡むなら桔梗湯(ききょうとう)。止まらないくしゃみや大量の透明な鼻水には小青竜湯(しょうせいりゅうとう)が効く。

「よく風邪をひく人は、予防的に漢方薬を服用するのも手です。普段から疲れがたまりやすく、胃腸の調子がいまいちの人には、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)。疲れやすさに加え顔の血色が悪く、貧血、冷えがある人は十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)がいいでしょう」

■胃腸トラブル

【食欲不振】

「胃腸の働きを高める代表的な処方が、六君子湯(りっくんしとう)です。冷たい飲食物を取ると胃腸トラブルが生じる場合は人参湯(にんじんとう)、慢性的に下痢が見られる場合は参苓白朮散(じんれいびゃくじゅつさん)もいいです」

【食べ過ぎ】

「安中散(あんちゅうさん)や平胃散(へいいさん)を常備しておいてはいかがでしょう。暴飲暴食による胃腸トラブルには大柴胡湯(だいさいことう)も効果的です。下剤成分が入っているため、症状が解消したら服用を中止してください」

【飲み過ぎ】

 五苓散(ごれいさん)、黄連解毒湯(おうれんげどくとう)、半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)を。

「冷たいビールの飲み過ぎには五苓散、アルコール度数の高い酒の飲み過ぎには黄連解毒湯が適しています」

■疲労感

 年末年始の慌ただしさで疲れがたまり、熟睡ができない時には人参養栄湯(にんじんようえいとう)。疲労感に加え、体が冷えてトイレが近く、むくみやすい時には牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)を試そう。

「今回紹介した漢方薬はドラッグストアやネットなどでも購入できます」

 漢方薬を不調改善の強い味方にしよう。ただし症状がひどい場合、「いつもと違う」と感じる場合は、正月でも開いている病院を見つけ受診を。

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