40%が3年以上痛みを抱える「五十肩」…4つのポイントだけ押さえれば対策はOK

眠れないほど悪化
眠れないほど悪化

 肩が痛くなり、腕を上げるのが困難になる五十肩。発症は50~60代で最も多い。この五十肩、そのうち良くなるだろうと様子見をしている方が多いのではないか。

 五十肩は、確かに放置していてもそのうち良くなることがある。しかし、「そのうち」がどれくらいかが問題だ。「2年経っても、半数程度の方が症状が残っていた」「40%以上に3年以上症状が残る」という報告もある。

 京都下鴨病院で肩関節外来を担当する森大祐医師は、こう話す。

「2017年に医学誌に掲載された論文では、『凍結肩(五十肩がひどくなった状態)が、自然に治ることを示したエビデンスはない』という結論が示されています」

「もしかして五十肩?」と思った場合、知っておくべきポイントを森医師は次のように挙げる。

①【受診すべきタイミングを逃さない】

 自然に症状が消えることもある五十肩だが、それでも不調は数カ月単位で続くのが一般的。

「肩が痛いために動かさないようにしていると、肩以外の筋肉も硬くなり、肩をより動かせなくなります。首や腰などにも影響が出る可能性があります」

 何より、肩の不調は生活の質の低下に直結する。肩が痛くて夜眠れない日が続けば日中の仕事や家事に支障が出る。

 痛くて肩を動かせなくなり、「髪を洗えない」「洗顔ができない」「エプロンの紐を後ろで結べない」「服の脱ぎ着ができない」となるケースは珍しくない。

「治療が遅れれば、痛みや拘縮(硬くなる)の程度が強くなる可能性が高い。早い段階で、適切な処置を受けるべきです」

 次のどれかに該当するようなら、整形外科を受診すべきだ。

●夜間に痛む
●とっさの動きで肩に激痛が走る
●じっとしていても肩がズキズキ痛む
●手を後ろに回しづらい
●腕が上がらない
●小さな「前へならえ」をした状態で腕が外側に開かない


②【肩の疾患を多く診ている整形外科医を受診】

「五十肩」という言葉は病名ではなく、中高年で起こる肩の痛みを一般的に「五十肩」と呼んでいる。

 その多くを占めるのは、肩関節周囲炎、あるいは肩関節周囲炎が悪化した凍結肩だが、別の病気、例えば腱板断裂、石灰沈着性腱板炎、変形性肩関節症などが原因であることも少なくない。原因によっては、治療法が異なる。

「ところが、整形外科は脊椎、股関節、膝など、専門領域が分かれていて、肩以外を専門とする整形外科医では、『肩が痛い=五十肩=肩関節周囲炎』という概念から思考を切り離せられない。あるいは肩関節疾患の診断から治療戦略を立てるのが苦手。そのため原因に応じた治療に結びつきづらいのです」

 日本整形外科学会所属で、肩疾患の治療実績がある整形外科専門医がいる医療機関を探せるサイトもある。「整形外科を受診しよう」からさらに一歩進んで、「肩を診れる医師を」へ。

③【強い肩の痛みがあれば、ステロイド注射を】

 肩関節周囲炎などで肩関節に炎症があれば、炎症と痛みを和らげるために肩関節に注射をする。

「肩の炎症が強い場合、ステロイドが非常に効果的です。肩関節内への注射なので、全身への影響は少なく、副作用の心配は少ない。受診した医師からステロイド注射の提示がなければ、ぜひ相談してみてください。ただし糖尿病の方は、ステロイドには血糖値を上昇させる作用があるため、注意が必要です」

④【一方の肩が五十肩になったら、もう一方の肩の五十肩対策を】

「一方の肩が五十肩になったら、もう一方も五十肩になる人が20~30%という統計があります。ただ、医療機関を受診した人を対象に調査した結果なので、実際はもっと多いでしょう。右(左)側が五十肩になったら、左(右)側がなる可能性も高いと考え、右(左)側の五十肩対策で効果があった運動やストレッチを予防的に行う。左(右)側に痛みが出始めたら、生活に支障が出る前に速やかに専門医の治療を受けましょう」

 なお、糖尿病がある場合の五十肩の発症率は高く、有病率は10~20%。「糖尿病なし」と比較して4~10倍確率が高くなるといわれているので、対策をしっかり頭に入れておきたい。

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