高齢者は「餅の窒息死亡事故」に注意! 男性は女性の2.6倍多い

お正月は餅を食べる機会が増える(C)iStock
お正月は餅を食べる機会が増える(C)iStock

 いよいよ明日はお正月。食べることが楽しみの高齢者にとっては、この時期に食べるお餅を楽しみにしている人もいるだろう。

 しかし、毎年、お正月の死亡事故で目立つのが高齢者による「餅の窒息死亡事故」であることを忘れてはいけない。厚労省の人口動態調査によると、「不慮の事故」のうち65歳以上で、食べ物が原因となった窒息死亡者数は年間3500人を超え、うち80歳以上は2500人以上だった。消費者庁の2019年までの2年間の分析では、その43%が1月に集中していて、とくに正月三が日が多かったことがわかっている。

 とくに気をつけたいのが高齢の男性だ。データで見ても、男性は女性よりも2.6倍も多い。弘邦医院(東京・葛西)の林雅之院長が言う。

「高齢者の事故が多いのは、高齢になると歯の機能が衰えて、かむ力が弱くなり、唾液の量も減って飲み込む力も弱くなるからです。しかも、喉に詰まったときに咳などで押し戻す力も弱くなるため、深刻な事故になりやすいのです」

 餅の窒息死亡事故を防ぐためには、餅を食べないことが一番の策。しかし、毎年楽しみにしている人もいるため、まったく食べさせないのは難しい。

「高齢者が餅を食べるときは、必ず人がついておくこと。餅は噛んで飲み込みやすいようにあらかじめ1センチ以下に切っておくこと、餅を口に入れる前に汁物やお茶でのどを潤しておくこと、ゆっくりよくかんで飲むことなどを心がけることです」

■餅による「正月便秘」にも注意

 もうひとつ忘れてならないのは、高齢者は喉だけでなく腸内で餅が固まり、便秘を起こすケースが少なくないことだ。

「餅を食べて1日以内にお腹が膨らみ、強い腹痛に襲われるなどの症状が出る場合が多く、病院へ緊急搬送されるケースも少なくありません。高齢者は内臓も老化で衰えていて食道は収縮力が低下し、胃も小腸に内容物を送り出すスピードが落ちて時間がかかる。お餅が温かく変形しやすい状況では胃の出口を通過するものの、小腸内で温度が低くなると腸管壁にくっついて固くなることで腸閉塞が起こるのです」

 ただでさえ、お正月期間中は運動不足と食べ過ぎで便秘になりがち。そのうえ、黒豆、ゴボウ、昆布などお節料理は消化が悪い食材が多い。それも正月便秘のリスクを高める原因になるという。

 自分では若いつもりでも、体は日々衰えている。正月早々、病院で過ごすことのないよう、高齢者は餅の食べ方には十分注意することだ。

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