寒い日に掃除をするなら要注意は…前かがみにしゃがみ込む雑巾がけや庭の手入れ

掃除は心臓に大きな負担をかける動作が多い
掃除は心臓に大きな負担をかける動作が多い

 年末は忙しくて大掃除をし損ねたなんて人や、正月明けは心機一転、家中をピカピカに掃除する! などと気合を入れている人もいるだろう。

 しかし、寒い冬の掃除は心臓にとって大敵になる。順天堂大学医学部心臓血管外科特任教授の天野篤氏はこう説明する。

「掃除には血圧を急上昇させたり脈拍を増やしたりするなど、心臓に大きな負担をかける動作が多いのです。それが寒い環境になると、なおさら変化が急激になり、心臓の負担もそれだけ増大します。心臓にトラブルを抱えている人はもちろん、心臓病のリスク因子となる高血圧、高血糖、高コレステロール、肥満などの生活習慣病がある人は、起床して、部屋の温度が低い中で作業をしたり、朝早くから外に出て掃き掃除をするのは避けたほうがいいでしょう」

 部屋、廊下、台所、洗面所、トイレ、浴室などの掃除に加え、洗濯や炊事、洗車にも注意が必要だ。

「拭き掃除、炊事、洗車などで冷たい水に触れるだけでも、心臓には負担がかかります。さらに、水を入れた重いバケツを持って移動したり、濡れて重くなった洗濯物を洗濯かごで運んだり、布団の上げ下ろしをすることでも、血圧は急激に上昇します」

 心臓に不安があったり、リスクが高い人は、重いものを持ち上げる際は小分けにして作業したり、家族などに協力してもらったほうがいい。ほかにも、心臓に大きな負荷をかけないために、洗濯物を干した後にすぐに掃除機をかけるなど、いっぺんに連続して作業しないように注意したい。

「また、とりわけ危険なのが、床の拭き掃除や庭の手入れをする際などにとりがちな『前かがみにしゃがみこむ姿勢』です。前かがみの姿勢は心臓が圧迫されるうえ、呼吸もしづらくなって血圧の変化が強く表れます。心臓への負担が大きいことから、心臓病の患者が一番やってはいけない姿勢といわれているほどです。どうしてもしゃがみこんで作業をしなければいけない場合は、腰をかけられる台などを利用したうえで、長時間は続けないように意識しましょう」

 冬は脱水にも気を付けなければならない。エアコン、ストーブ、ホットカーペット、コタツといった暖房器具を長時間つけっ放しにしていることも多く、考えている以上に部屋や体は乾燥している。そんな環境で掃除や家事に没頭して体を動かしていると、気付かないうちに脱水状態に陥りやすくなる。

「心臓は脱水にめっぽう弱い臓器です。脱水状態になると、血液の量が減って、粘度も上がります。1回の拍動で送り出す血液量が減るうえ、流れにくい血液を体全体に送らなければならない心臓は、心拍数を増やして対応しようとするため負担が増大します。とりわけ心機能が落ちている人は、脱水が原因で心不全を起こすケースもあるので注意が必要です。掃除などの作業を行っている最中はもちろん、気温が低い冬でも、日頃から喉の渇きを感じなくてもこまめに水分摂取をしてください。また、日頃から降圧剤を服用して血圧を管理している方は、空腹や脱水の状態で薬だけを飲んで掃除していると、薬の効果が発現した際に低血圧を起こして卒倒することもあり得ます。休み休みとほどほどにも大切な取り組み方です」

 自宅をきれいにする際は、心臓を守る対策も忘れてはいけない。

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