一般的に膵臓がんは治すのが難しいがんと言われています。なぜでしょう? ひとつは症状が出にくく、早期に見つかるものが少ないからということがあります。
また、膵臓の周りには血管やリンパ管が豊富で、肝臓転移を含めた遠隔転移とリンパ節転移しやすいことが挙げられます。実際、手術でも放射線治療でも原発巣である膵臓そのものはコントロールできても、肝臓転移が出てきてしまい、最終的にお亡くなりになるケースはよくある話かと思います。
膵臓は身体の中央にあり、手術するにはたどり着きにくい、さらに周りに大血管や腸などの大きな臓器があるのが問題です。また、進行してくると腹水がたまりやすく、苦しい。ただ、腹水を抜くとますます体調が悪くなります。腹水にはがん細胞以外に、アルブミンや免疫グロブリンなど体に重要なタンパク質も大量に含まれているからです。
以前、膵臓がんが十二指腸に進展して、そこから出血。毎週のように輸血している患者さんが私の外来にいらっしゃいました。病院側から、「もう治らないので輸血もそろそろ止めて、諦めてください」と説明され、困惑しているというのです。
病院側としても泣く泣くの決断だったのだと思います。亡くなることがわかっている患者さんに、限りある輸血を毎週行うことが難しいとの判断だったのだと思います。ただ、出血を止めるだけなら放射線治療で比較的容易です。実際に、照射開始して2週間程度で輸血は不要になり、患者さんと家族には大変感謝されました。
その後も肝転移が出現して、血管内治療(カテーテル治療)などさまざまな治療法を駆使し、手を尽くしたのですが、残念ながら亡くなられています。
じつは亡くなられた患者さんが私のところに来る前に受診されていた病院は、放射線治療を行っている病院でした。放射線治療医がこの患者さんの状態を知っていれば、当然、私と同じような治療を施したことでしょう。
このケースはいかに治療を担当する医師と放射線治療医との連携がとれていないか、という状況を表しています。それとともに、諦める前に一度は放射線治療医に相談すべきである、と思うのです。
教えて放射線治療 ドクター黒﨑に聞く