月別死亡がアップする…寒い2月は「血管病」に要注意!

写真はイメージ
写真はイメージ

 気温が低い2月は血管の病気に注意したい。高血圧性の病気、心筋梗塞、心筋症、不整脈などの心臓の病気、くも膜下出血、脳内出血、脳梗塞などの脳血管の病気で亡くなる人が多くなる。相武台脳神経外科(神奈川県相模原市)の加藤貴弘院長に聞いた。

 2022年の総死亡数は156万9050人。このうち2月は4番目に多くの人が亡くなった。その数は13万7763人。

 内訳を見ると、がん(2万9985人)、インフルエンザや肺炎などの呼吸器疾患(1万6226人)をしのいで、高血圧性の病気(1211人)を含む循環器系の病気(3万6220人)が目を引いた。つまり、2月は血管の病気で亡くなる人が多かった。

 そのうち目立ったのは、老衰などさまざまな原因で心臓がうまく働かなくなる心不全(9381人)、脳梗塞(5170人)、不整脈および伝導障害(3597人)、急性心筋梗塞(3096人)、脳内出血(3064人)、その他の虚血性心疾患(4444人)だ。

「2月に血管の病気で亡くなる人が比較的多いのは、冬の寒さによるストレスが体内に蓄積し、病気を発症する閾値にまで到達するからでしょう」

 たしかに東京の場合、気温は2月より1月の方が低い。しかし、体感温度は気温以上に低く感じる。2月は冬型の気圧配置や低気圧の影響で、風も強くなる。体感温度は風に影響され、風速1メートルにつき1度下がるといわれる。仮に気温5度でも風速10メートルの環境ではマイナス5度のように感じる。しかも、2月は朝に晴れていると地表の熱が奪われる放射冷却現象のため、より寒く感じる。また、2月下旬になると日中の最高気温が10度を超える日も出てきて、一日の寒暖差が大きくなる。

 ヒトは寒さの刺激でドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリンなどのカテコールアミンが分泌され、心拍数を増やし血管が収縮するなどして血圧が上昇する。

 実際、高血圧の人は夏と冬の血圧差が10㎜Hg程度ある人が多く、人によっては20~30㎜Hgも異なるケースがある。そのことに気づかない高血圧患者も多く、自分では血圧のコントロールができているつもりでも、うまくいっていないケースが少なくない。

 昨年の米国心臓協会(AHA)の高血圧学術集会で発表された研究では、冬は5%の高血圧患者で血圧コントロールができていないと報告されている。研究は6万人以上の成人高血圧患者のデータを解析した。

「冬は鍋料理など塩分の多い食べ物が多いうえ、汗をかくことも少なく、運動不足で体重も増えがちで、ただでさえ高血圧になりやすい。だからこそ、血圧は毎日きちんと測っておくことが大切です。とくに、家庭用血圧計での起床後血圧が135/85㎜Hgを超えると、脳卒中や心筋梗塞の発症リスクが2~3倍に高まる危険な血圧といわれていますから注意が必要です」

■トイレでの事故にも気を付ける

 とくに危ないのは朝の起床時だ。日内変動で血圧は朝方高くなるうえ、起床前後しばらくは血液が固まりやすい。夜間は水分補給がなく、汗もかくので心臓に入る血液量が少ない。そのため、粘っこく、固まりやすい血液が流れている。その状態で、急に起き上がって心拍数を上げて血流を増やせば、加齢や糖尿病などでもろくなった血管が破れたり、血栓ができてそれが脳や心臓に飛ぶことも考えられる。だからこそ急性心筋梗塞は午前6~10時に発症しやすいといわれている。

「血圧が高い高齢者は起床時にすぐに起き上がるのは避け、布団の中でしばらく体を動かすなどした後にゆっくり立ち上がりましょう。脳は大量の血液を必要としており、動脈硬化などで必要な血液が流れ込まないまま立ち上がると、立ちくらみから転倒して大けがをする恐れがあります。また、温度差が10度以上ある場所への移動は要注意。居間からお風呂はもちろんですが、夜中にトイレに立つときはガウンを羽織るなどして体を温かくすることが大切です。布団の中と外では20度くらいの温度差となる場合があります」

 冬はトイレ内での事故も注意したい。いきみから脳卒中を起こすことがある。

 また、冷たい水に手を入れると、それだけで血圧が急上昇する。高齢者の中にはもったいないと思う人もいるかもしれないが、炊事や掃除する際は温水を使用したい。また、かがむなどして心臓を圧迫する姿勢をとらないようにする。

 高齢になると体温調節機能が低下しやすく、寒さを感じなくなる。しかも、筋肉量や食事量が少ないので熱もつくり出しにくいことから低体温症にもなりやすい。最近は「暖冬」という言葉を耳にすることも多いが、高齢者はとくに気を緩めず、しっかり防寒対策をすることだ。

関連記事