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抜け毛の原因は「喫煙」? AGAとの関連を検討した研究報告

男性型脱毛症はさまざまな要因が関連しているが…
男性型脱毛症はさまざまな要因が関連しているが…

 頭髪の抜け毛は、身近な健康問題のひとつであり、美容の観点からも悩まれている方は多いでしょう。最も一般的な抜け毛は、男性型脱毛症(AGA)によるもので、日本人男性では20代の後半から30代の前半に出現し、40代以降にかけて徐々に頭髪量が減少していきます。

 AGAは、男性ホルモンが毛髪の成長サイクルを乱すことで発症します。ただし、AGAの発症には年齢や性別、遺伝的な要素、生活習慣など、さまざまな要因が関連していると考えられてきました。
過去に報告された研究では、喫煙がAGAの発症に関連しているとの結果も示されています。しかし、AGAと喫煙に関連性を認めないことを報告した研究もあり、両者の因果関係については一貫した結論が得られていませんでした。

 そんな中、喫煙とAGAの関連性を検討した最新の研究論文が、美容皮膚科の専門誌に2024年1月4日付で掲載されました。この研究では、喫煙とAGAの発症もしくは悪化のリスクについて、23年8月までに報告された学術論文が網羅的に収集されました。最終的に8件の論文が特定され、各論文で示されている解析データを統計学的に統合(メタ分析)しています。

 その結果、喫煙をしている人では、喫煙をしていない人と比べて、AGAの発症が1.84倍、統計学的にも有意に増加していました。AGAの発症はまた、1日の喫煙本数が10本未満の人と比べて、10本以上の人で1.96倍、統計学的にも有意に増加しました。さらに、喫煙をしている人では、喫煙をしていない人に比べて、AGAの悪化リスクが1.27倍、統計学的にも有意に増加しました。

 論文著者らは「AGAに対する治療法は限られており、AGA患者に対して、喫煙が及ぼす悪影響を適切に情報提供すべき」と結論しています。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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