老親・家族 在宅での看取り方

40代男性からの電話「コロナ後遺症で倦怠感がひどく病院へ通えません」

写真はイメージ
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「コロナ後遺症外来で、フリーテストステロンが5.8と低くて、男性更年期障害って言われました。今後治療を始める予定ですが、倦怠感がひどくて、後遺症外来に行けるのかわかりません。そちらの在宅医療で、男性更年期障害の治療は可能でしょうか?」

 電話相談の主は、40代の男性。強い倦怠感で起き上がれない日もあるとのことで、緊急に訪問診療を開始しました。

 男性ホルモンであるテストステロンは、大脳に作用して前向きな思考を促し、筋肉や骨量の増加にも関係しています。中でも活性化しているフリーテストステロンが不足すると、性機能障害、認知機能の低下、うつ病、内臓脂肪の増加、骨粗しょう症のリスク向上ともなります。イキイキとした活力を維持するためにも必要なホルモンです。

 特にこの患者さんはさまざまな要因が重なって不眠や食欲不振、みぞおちの違和感や強い吐き気を催しておられ、すぐに薬を調整しました。

「後遺症外来のA先生がクラリスロマイシンを長期間投与すると倦怠感に効果があると発表していました。こちらを先生に調べてほしいです。飲み合わせがどうかわからないので使えるか聞きたい。なんとかしたいと思っているので何とぞよろしくお願い致します」

 さまざまな情報が飛び交うSNSで、コロナ後遺症に関してご本人も調べ積極的に提案をされ、そのつど我々もできることを模索します。

「最近どかーんと倦怠感を感じることは減ってきました」(本人)

「よかったですね。ご家族も喜んでるんじゃないですか?」(私)

「家族と毎日泣いてます。すみません……まさかこんなことになるなんて」(本人)

「後遺症外来はどうなりました?」(私)

「やっと電話がつながって3カ月後ですけど行けることになりました」(本人)

「よかったですね。それを目標に頑張りましょう」(私)

 それから3カ月ほど経った診療では随分改善され、さらに半年たった頃には後遺症外来と訪問診療を併用されるほどに。

「後遺症の程度とかは言われたんですか?」(私)

「0から9まであって0が一番重いんですけど僕は7でした」(本人)

「7の方の今後の良くなってくるスピードとかって聞きました?」(私)

「歩けているなら、はやいかもねって」(本人)

「最初来た時より状態落ち着いてますものね」(私)

 そして1年経った頃には、倦怠感は多少はあるものの睡眠の質も良くなったご様子。

「調子どうですか?」(私)

「後遺症外来の先生には週1回外を歩いていいって言われて」(本人)

「どのくらい?」(私)

「目標は30分!」(本人)

 そして「後遺症外来に通えるようになったので訪問診療は終了でお願いします」とうれしい電話をいただくことになりました。さまざまな病気や事情により在宅医療を選ばれる方がいます。その中でも元気になったから訪問診療をやめるというケースは、私たちにとってやりがいを感じるうれしい瞬間なのです。

下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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