スポーツでわが子に「ケガをさせない」「繰り返さない」ポイント…スポーツドクターに聞いた

写真はイメージ
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 子どもがスポーツでケガをした場合、きちんと治し、同じケガを二度としないように親が正しい知識を持ちたい。県外から通院するスポーツ選手も多い「かみもとスポーツクリニック」(栃木県佐野市)の上本宗忠院長(スポーツドクター)に話を聞いた。

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「ケガには2種類あります」(上本院長=以下同)

 ひとつは、「ぶつかった」「ひねった」といった原因となる明らかなエピソードがある急性のケガで、捻挫、打撲、脱臼、骨折、肉離れなどが該当する。スポーツ外傷とも呼ばれる。

 もうひとつは、ランニングやジャンプによる膝の痛み、投球による肘や肩の痛みなど繰り返すことで生じる慢性のケガ。こちらはスポーツ障がいという。たとえば、小学校高学年や中学生に頻発する膝のスポーツ障がいが「オスグッド病」だ。走る・跳ぶ・蹴るなどの動きを繰り返すことで太ももの前にある大腿四頭筋が収縮し、膝のお皿の下あたりに炎症が生じて膝痛が起こる。膝のお皿の下辺りの太い骨「脛骨」が隆起したり、乖離が起こったりすることもある。肘のケガである野球肘や、かかとの「シーバー病」も、スポーツ障がいになる。

「子どもは骨や筋肉、腱などが成長期にあり、それぞれの成長スピードが異なります。そのため筋骨格構造のバランスが崩れやすい。また、小学生では1年生と6年生では体格や身体能力に大きな差があり、また同じ学年でもその差がみられます。したがって、画一的なトレーニングでは子どもはケガをしやすい。その子の体格や身体能力に即した運動を心がけたい。また急性か慢性かでケガの対処法が異なるので、親も子どもも正しい知識を持つべきです」

 チームのレギュラーの座がかかっているからと、「痛い」という言葉をのみ込んだままの子どももいる。痛い時は痛いと言い出せる環境を親や指導者がつくっていく。動作や表情がおかしければ、どうしたのかと親から声をかけたい。

 さて、対処法だ。

「急性のケガは、その場ですぐにRICE療法をやってください」

「Rest(安静)」「Icing(冷却)」「Compression(圧迫)」「Elevation(挙上)」。むやみに動かさず安静を保ち、患部に氷や氷水を15~20分当て冷やす。皮膚の感覚がなくなったらやめ、感覚が戻ったらまた当てる。患部に弾性の包帯などを巻いて圧迫し、心臓より高い位置に保つ。速やかに行うことで、痛みや腫れを長引かせない。RICE療法は応急処置なので、その後は医療機関を受診する。

■日常の姿勢がクセの原因になる

 一方、慢性のケガは、痛む患部を休ませるとともに、スポーツのフォーム、さらには日常での姿勢(座位や立位)や動作(歩行、立ち座り)にも目を向け修正していくことが重要だ。

「ある中学生は投球指導後はフォームが良くなるのですが、現場ではまた元に戻ってしまう。リハビリ後、待合室で見ると、背中を丸めて下を向いてずっとゲームをしていました。背中が丸まり肩甲骨が前傾する姿勢が習慣になっていると、骨盤が後傾して股関節がうまく使えなくなりやすい。ボールを投げる時には体をねじるわけですが、下半身がうまく使えず、手だけで投げるようになる。すると肩や肘など局所を酷使することになり痛みが生じる。また骨盤が後方に倒れた姿勢は、のけぞるような走り方になり、太もも後面の筋肉(ハムストリングス)が短縮し伸縮がうまくいかず、肉離れを起こしやすくなります」

 普段の姿勢については、診察時だけではわからないことも多い。本人が自覚していないこともよくある。親のチェックが役立つ。

「日常の姿勢や動作がケガの原因になっていることをしっかり伝えると、意識して正そうとするようになる。クリニックでの指導とともに、本人の理解と意識が非常に重要。ケガの背景にある原因に気付き、変わることで、動作(フォーム)が良くなり、ケガを繰り返さなくなり、パフォーマンスが向上します」

 かみもとスポーツクリニックでは、スポーツドクターである上本院長のほか、理学療法士、柔道整復師、アスレチックトレーナーといったスポーツ外傷・障がいの専門知識を持ったスタッフがチーム体制で治療・指導にあたっている。

 整形外科も専門領域が広いので、スポーツによるケガの場合は、スポーツドクター(スポーツ医)がいる整形外科を受診することを勧める。

 日本整形外科学会のホームページに、日本整形外科学会認定スポーツ医名簿(https://www.joa.or.jp/public/speciality_search/sports.html)があるので参考になる。

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