歯周病と虫歯には「カビ」ケアが大切…目指すは残歯20本

写真はイメージ
写真はイメージ

 一日でも長く元気で暮らしたい。誰しもそう願っているが現実は厳しい。日常生活に支障なく、自立して元気で生活する期間を指す健康寿命は、2019年時点で男性72.68歳、女性75.38歳。その時点の平均寿命は男性は81.41歳、女性は87.45歳であることから、男性は約9年間、女性は約12年間、寝たきりや持病で苦しみ生きていくということだ。それを避けるため、日ごろから散歩や階段の利用などに精を出す中高年は多い。しかし、最も手軽で効果があるのが「口腔ケア」だ。自由診療歯科医師で「八重洲歯科クリニック」(東京・京橋)の木村陽介院長に話を聞いた。

「お口の中の健康が体全体の健康に直結することは明らかです。たとえば、2021年には死因第6位となる4万9489人が亡くなり、1日当たり136人の命を奪った誤嚥性肺炎は、お口の汚れと嚥下機能の低下に関係するとされています。お口の汚れで発症する歯周病や虫歯などによる口腔内の炎症や感染は、全身の炎症を刺激し、慢性疾患を促すことになります。具体的には糖尿病、脳梗塞、心臓血管疾患、がん、認知症などに影響し、同時に糖尿病が歯周病を悪化させることが報告されているのです」

 歯や歯茎の健康が損なわれると、しっかり噛めないため、硬いものが食べられないなど食事が制限され、栄養不足になったり、嚥下機能にも影響する。さらには、皆と同じものが食べられないことで社会的交流や自己肯定感が低くなるなどの悪影響が出やすい。

「そのため、1989年から政府と日本歯科医師会が8020(ハチ・マル・ニイ・マル)運動を提唱し、80歳になっても自分の歯を20本以上保つことを奨励しているのです」

 本数の20本には根拠がある。国民健康・栄養調査をはじめ、歯の本数と食べ物を噛む能力(咀嚼力)には関連があり20本以上あれば硬い食品でもほぼ満足して噛めることが報告されてきたからだ。

■歯垢を悪化させない

 問題は、口の健康の大切さが科学的に明らかにされ、その重要性を多くの高齢者が認識して歯磨きを続けていながらも、日本人の2人に1人は歯周病であり、大人の虫歯も多い現実は変わっていないことだ。

「お口の汚れで最も問題なのは歯垢(プラーク)です。その情報が正確に伝わっていません。唾液の質と量が低下すると、歯の表面では虫歯菌であるミュータンス菌などが食べかすを分解してグルカンと呼ばれるネバネバした物質をつくります。その塊が歯垢です。歯垢内で増殖した細菌は糖分を分解し、酸を分泌します。その酸が歯の表面を溶かすことで虫歯をつくるのです。虫歯は放っておくと歯の歯髄が感染し、根に膿がたまり、最後には歯が抜けたりします」

 歯垢は歯周病にも関係している。時間と共に成熟し、歯垢内に酸素が少なくなると、酸素を嫌う嫌気性菌が多くなる。この嫌気性菌は歯肉を攻撃して炎症が起き歯周病が発症し、口臭の原因にもなる。

「歯と歯の間の食べかすを除去するための歯間ブラシやフロス、歯垢を機械的に取り除く歯磨き、歯垢が口腔内のカルシウムと結びついてできる歯石の歯科医院での除去、などの重要性を歯科医師が強調するのは、これらが虫歯や歯周病の予防につながるからです。それはひいては全身の健康に関係しているのです」

 ところが、「歯垢についての重要な問題が一般の人に認識されていない」と木村院長は言う。それは真菌の問題だ。

「口腔内には細菌と共にさまざまな真菌=カビが生息しています。問題は、カビが多い口腔内の歯垢は病原性の強い嫌気性菌の割合が増えるのと、ネバネバして歯磨きをしても取りにくい歯垢になること。対してカビが少ないとふわふわした清掃しやすい歯垢になる傾向にある。つまり、口の中のカビを少なくできれば、虫歯や歯周病の原因となる歯垢を変えることができるのです」

 実際、木村院長は2017年に鶴見大学歯学部の教授や製薬会社との共同研究で「抗真菌剤の長期使用が歯垢量を減らし歯垢の粘着性も低下させる」ことを明らかにしている。木村院長は24年間の抗真菌剤配合の歯周病・虫歯予防の研究結果を反映した歯磨き剤(※)の開発に成功。昨年末から販売している。

「使用している抗真菌剤の主要成分は食品のココナツオイルや母乳にも含まれていて、日常的に摂取しても問題ない脂肪酸の一種です。さらに植物由来の厳選された5種類の精油やその効果を増強するポリフェノールやサポニンまで加えています」

※「植物の戦う力」は大手通販サイトで限定販売中。木村院長は2月21日放送のテレビ朝日系「健求者」に出演した。

関連記事