介護の不安は解消できる

認知症に備え「エンディングノート」に記入しておくべき内容は?

写真はイメージ(C)iStock
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 日本人女性の約半数、男性の4分の1が90歳を祝う「卒寿」を迎えているのはご存じですか。日本は世界一の長寿国である一方、認知症の患者数も世界一といわれています。

 認知症の発症に備えて準備しておきたいのが「エンディングノート」です。いつか訪れる最期に備えて自分にまつわる情報や希望を記すノートで、万が一、認知症を発症しても所有する資産や終末に関する希望を記入しておけば、意思疎通が難しくなったとしても家族に自分のことを伝えられます。

 ただ、高齢の親がなかなか記入してくれないとご家族から相談を受けるケースが少なくありません。本人いわく、「字が汚いから人に見られたくない」「書くのがおっくう」「妻より先に自分が死ぬから必要ない」など背景にはそれぞれ記入をためらう理由があります。まずはご家族が実際に書いてみて親が記入したがらない気持ちを理解しましょう。記入を促す際は、最初からすべて埋めようとせず、まずは口座番号など事実の書き写しから始めるといいでしょう。自力で書くのが難しい方であればご家族が聞き書きしても構いません。

ファイナンシャルプランナーの山田静江氏(提供写真)
ファイナンシャルプランナーの山田静江氏(提供写真)

 エンディングノートに必ず記入してほしい情報は、①「人」②「物」③「金」④「健康情報」の4つです。

 ①「人」は、いざとなったときに連絡してもらいたい親族や友人、知人の名簿です。電話番号やメールだけでなく、関係や、できれば住所も書いておきましょう。②「物」は、所有している不動産などの資産です。国が行った調査によると、全国の65歳以上の男女のうち、マイホームを持つ割合はおよそ9割と報告されています。投資目的でマンションやアパートを所有している人も多いでしょうから、場所と名義は必ず明記してください。

 ③「金」は、預貯金や株式、投資信託といった金融資産のことです。借金やローンも相続遺産になるので、亡くなった後にトラブルにならないよう記入しておきましょう。④「健康情報」は病歴や手術歴、服薬中の薬などの情報を書きます。認知症を発症すると過去の詳しい既往歴について思い出せず、他の病気を併発しても適切な治療を受けられない可能性があります。かかりつけ医やかかりつけ薬局などの情報も重要です。

 書き終わったら各ページに書いた日付を記入し、気持ちに変化がないか1年に1回は見直して、家族と共有しておくといいでしょう。

▽山田静江(やまだ・しずえ)NPO法人ら・し・さ副理事長。早稲田大学商学部卒業後、銀行や会計事務所などを経てファイナンシャルプランナーとして独立。NPO法人ら・し・さでは、終活アドバイザー協会の運営や、エンディングノートの普及活動を行っている。

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