依存症から命を守る

【買い物依存症】山積みになった購入品を見つけた夫に促され…

写真はイメージ(C)iStock
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 どんなに買っても満足できない。買った物を未開封のまま放置している──。女性に多い「買い物依存症」は、浪費癖から思わぬうちに進行している恐れがある。「マリアの丘クリニック」院長の近藤直樹氏に聞いた。

 夫と2人の子供と暮らす30代の女性は、出産をきっかけに専業主婦になり子育てが一段落すると日中に暇を持て余すように。夫の仕事が忙しく家庭内での交流が減り、孤独から抑うつ状態になっていた。寂しさを紛らわせるために買い物に出かけ、常連になると店員と世間話をする仲になり通い続けた。ある時、山積みになった購入品を発見した夫に勧められクリニックを受診した。

 買い物依存症は、過剰に買い物を繰り返す状態で、一時的な高揚感は感じるものの購入品への執着はなく、「買う行為」に強く依存するのが特徴だ。

「さらに、通常であれば何かの衝動が起こると脳の前頭葉が働いて抑制に働きかけるが、うつ病や双極性障害、発達障害の人は衝動抑制が障害されているので購買欲求が止められなくなる。買い物依存症は、これらの精神疾患に付随して現れる症状のひとつなので、正式な病名ではないのです」

 買い物依存症は、買う行為自体が目的なため欲しいと思っていない物も購入する。さらに衝動のコントロールが難しくなると一度買い物を始めると歯止めが利かず、自分の収入以上の金額を費やしたり、場合によってはキャッシングローンに手を出すケースも少なくない。

「買い物依存症から脱却するには、根底にある精神疾患に対する治療が基本です。居場所を求めて店通いをしていたのであれば、代わりとなる居場所を新たにつくる必要がある。スポーツジムはインストラクターとの交流や馴染みの仲間ができると居場所になるので、おすすめです」

 また近年はキャッシュレス化に伴い、電子決済が主流になりつつある。自分でも気付かないうちに使い込み、借金が膨らんで自己破産や個人再生を行う買い物依存症の人も少なくないという。目で見てお金の減りが確認できるよう現金払いを徹底し、支出を記録する癖をつけたい。

「買い物依存症は現物がたまるので、ギャンブル依存症などと違って家族が早期に気付きやすい。箱に入ったまま使用された形跡がない物がいくつもたまっていたら買い物依存症を疑い、受診を促してください」

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