看護師FPが指南…がんと診断されたらお金のために今すぐすべきこと

働き盛り、子育て世代のがんが増えている(写真はイメージ)/
働き盛り、子育て世代のがんが増えている(写真はイメージ)/(C)日刊ゲンダイ

 今、がんと診断されたらお金はどうする──? まずすべきことを、看護師からファイナンシャルプランナーへ転身し、病院や個人事務所でがん患者を対象に家計相談を行っている黒田ちはるさんに話を聞いた。

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 がん治療の進歩で、治療効果が上がり、選択肢も増えた。また、がんは手術したら終わりではなく、その前または後に、薬物療法や放射線療法が行われることが珍しくない。かつてと比べ、治療費が高額化、かつ長期化する傾向にある。

「人によっては、年単位でがん治療が続くこともあります。当初の予定と異なり休業や退職をせざるを得なくなるケースもあるでしょう。窓口での支払いが高額になる場合に、自己負担額を所得に応じた限度額にするために医療機関に申請する限度額適用認定証(※)や、申請すれば支払った医療費の一部が戻ってくる高額療養費の制度を使っても、収入が減っている一方で出ていくお金が増える期間が続くと、家計が圧迫される可能性があります」

 どれくらい支障が生じるかは個人差があるものの、一般的にまずやるべきことは、支出と収入のバランスの確認だ。①今後の治療スケジュール②治療費③生活費やローンなど元々の支出④休業期間や復職のタイミングなど仕事や生活の予定⑤給料のほか高額療養費・傷病手当金(病気休業中に加入する保険組合から支給されるお金)など入ってくるお金--を書き出すと一目瞭然。

「利用できる制度やサービスは、自分で申請しなければならず、申請してすぐにお金が支給されるわけではありません。入ってくるまでは時間がかかるのに、お金はどんどん出ていく。“経済的体力”があるうちにお金が入ってくるよう、早く手を打つことです」

■世帯単位で収入と支出を考える

 次にすべきは支出の見直しだ。ただし、その前に夫婦で家計の内容をしっかりと共有する。

「共働き家庭によく見られるケースで、財布が別々のために、お互いの収入と支出を詳しく知らない。健康な時ならそれでもいいですが、夫婦のどちらかが病気になり働けなくなった場合、世帯単位で収入と支出を考えなくてはなりません」

 支出には、大きく分けて食費や光熱費といった変動費と、住宅ローンや教育費といった固定費がある。

「治療の長期化を考えると、支出はやみくもに減らしてはだめ。みなさん、身近で手をつけやすい変動費から減らそうとしがちですが、食費や光熱費は健康に直結しますし、これらで無理を続けると治療や生活の意欲減退につながり、家族関係に支障が生じることもある。私がお勧めしているのは、固定費の見直しです。一度変更すれば基本的に生活に大きな変化がない限りそのままでよく、また額が大きい分、家計にもたらす変化が大きい」

 住宅ローン、自動車保険、携帯・インターネット料金、クレジットカード、幽霊会員の習い事の月謝……。黒田さんが対応した事例では、これらを見直した結果、月8万円近くの支出減になったケースもある。

 ただし、やはり治療の長期化を念頭に置くことを忘れてはいけない。

「例えば住宅ローンです。銀行に相談し返済条件を変更する『リスケジュール』で月々の支払いが減っても、長くて1年。1年後も治療が続いており、収入が減っている状態であれば、また同じ悩みを抱える。住宅には固定資産税がついてくるので、ローンをキープできても固定資産税をどう払うかという問題も生じます」

 場合によっては、住宅の賃貸や売却なども視野に入れて検討することも必要。

“聖域”になりがちな教育費も、考えの転換を図りたい。

「夫婦で、子供が大きい場合は子供も交えて、教育方針とともに、どこまで親として出せるのかについても話し合いましょう。その上で、学習費以外で多くかかっている部分をどうするか考える。奨学金という手段もあります。子供のためになんとか頑張りたいという親心は理解できますが、治療が長引き後々治療費や老後の資金が不足し、就職したばかりの子供の援助が必要になるというケースもあるのです」

 2人に1人ががんという時代。働き盛りでがんを発症する人も増えている。転ばぬ先の杖として、覚えておきたい。

※マイナンバーカード健康保険証利用の場合は不要

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