病気と共に生きていく

体にあれほどの異常をきたす経験を経たからこそ、今の自分がいる

セルフポートレート展も開いた
セルフポートレート展も開いた(提供写真)
榊原愛さん(39歳)=アトピー性皮膚炎

 子供の頃から抱えていたアトピー性皮膚炎が増悪。3カ月間休業し、ひどいかゆみと乾燥による痛みを耐えしのぎながら、このまま治らず今の状態が続くなら、自分は今後どういうことをしたいのか、公務員として勤め続けて人生終わっていいのか、と考え続けました。

 復帰してすぐ、それまで3年間関わってきたプロジェクトの集大成ともいえるイベントがあったんです。プロジェクトそのものは、私もやりがいを感じて取り組んでいたもの。休業中、脳裏をよぎった「退職」という文字も、仕事を再開したらどこかに飛んでいくかもしれない。もしそうなったら仕事を続けようと思っていたんですが……。

 イベントを終えても、退職しようという気持ちは変わらなかったんですね。週末を経て、月曜に出社し、上司に「辞めます」と伝えました。休業期間はあったものの、普通に仕事をしていましたから、「えーっ!」と驚かれました。

 現在は、自分が考えていることを、絵や写真、文章など形を限定せずに表現したいと、活動をしています。その傍ら、彫師になるため、タトゥーの勉強もしているんです。アトピー性皮膚炎だったので、タトゥーをまさか自分がやるとは考えてもいなかった。それこそ、アトピー性皮膚炎の悪化時、ドロドロになっていた肌のところに、タトゥーが入っている。そういう人生に変わったから。

 仕事を辞めて、ふとタトゥーを入れたいと思ったんです。随分前に知人がタトゥーを入れているのを見て、めっちゃきれいと衝撃を受けたのが、どこかに残っていたのかもしれません。インターネットで見つけた彫師の方に会いに行き、足首にハスの花のつぼみに鳥が止まっているデザインを入れてもらい、その間、彫師と話が弾んで。

 当時古民家に住んでいたんですが、彼女(彫師)が遊びに行きたいと言い、そのまま2人で出かけるという謎の展開になったんです。そうやっていろいろ話しているうち、暇なら経理とかのバイトをしないかと誘われて。1年くらい続けているうちに、自分も「彫る」ということをやってみたくなり、タトゥーを学び始めました。

 アトピー性皮膚炎で家から一歩も出られなくなるような、自分にとって人生を揺るがすようなことがあったからこそ、現在の自分がいる。体にあれほどの異常をきたさなかったら、モヤモヤしながら公務員生活を続けていたかもしれません。

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