やけどの正しい治し方(2)ラップ療法は「湿潤療法」のひとつだがデメリットも

浸出液のコントロールが大切
浸出液のコントロールが大切(C)iStock

 やけどした患部をラップで覆って治す「ラップ療法」は、一般人が行うと感染を起こすリスクがあるため安易にやってはいけない。ただ、専門家であればラップによる治療も可能だという。

 やけどの専門家でもある「身原皮ふ科・形成外科クリニック」(広島市)の身原京美院長は言う。

「ラップ療法は『湿潤療法』のごく一部なんです。昔はやけどをした場合、傷から出る浸出液をとにかく乾かせといわれていたのですが、1960年代になると、浸出液を利用して治す方が3倍早いというようなことがいわれ始めました。医療機関では主に創傷被覆材、家庭では市販の『キズパワーパッド』などを使って、浸出液をドレナージ(排出)せずに閉じ込めて早く治る環境をつくる、というのが湿潤療法です。ただし、医師が実施する湿潤療法には、基本的にラップは含まれません。ラップを使うメリットがまったくないためです」

 やけどに限らず、すり傷や床ずれなどでも湿潤療法が行われるが、最も大切なのは浸出液のコントロールだという。

 しかし、ラップではそれができない。たとえば、やけどでできた水ぶくれが破綻し、中から汁が出てくるケースがあるが、それをラップで閉じ込めてしまうと、細菌などの感染が生じて悪化してしまう可能性がある。ラップでは密閉の度合いを調整できないのだ。

「大切なのは、過度な湿潤ではなく適切な湿潤なのです。最大のリスクは感染なので、浸出液の度合いを見ながら、使うのは軟膏+ガーゼがいいのか、創傷被覆材なのか、それともまた別のものがいいのか、といったように方法を決めていきます。個別に異なる病態をきちんと把握して、一番トラブルなく良いゴールにたどり着けるように治療するというのが医者の役目。ラップ療法に限らず、『ひとつの何かをしたら、魔法のように全部治る』というのは、医学ではあり得ない話なんです」

 広範囲のやけどにラップ療法を行ったことで、感染症により死亡した例もあるという。ひどいやけどをした場合、自己診断はせずに医療機関に行くべきだ。 (つづく)

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