子供のアトピー性皮膚炎(上)…生後6カ月から使える新薬が登場

小児に使える薬は非常に限られていたが…
小児に使える薬は非常に限られていたが…

 アトピー性皮膚炎の新薬が2018年以降続々と登場し、その効果の高さが注目されている。ただし、小児に使える薬は非常に限られていた。ところが昨年9月、新薬のひとつデュピクセント(一般名:デュピルマブ)が生後6カ月から使えるようになった。日本では初めてのことで、小児のアトピー性皮膚炎で知っておくべきことを2回にわたりお伝えする。

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「デュピクセントが生後6カ月から使えるようになり、小児のアトピー性皮膚炎の治療が劇的に変わりました」

 こう言うのは、近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授の大塚篤司医師。

 アトピー性皮膚炎の病態は、三位一体だ。「免疫の異常で起こる炎症」「乾燥肌によるバリアー機能異常」「かゆみ」の3つがあり、それらが互いに関連し合っている。乾燥肌やかゆみを改善しても、炎症(免疫の異常)が改善されなければ、いったん良くなったように見えても、また症状をぶり返す。

「従来の治療では、例えば炎症にはステロイド外用薬、乾燥肌には保湿剤、かゆみには抗ヒスタミン薬というように、それぞれ対策が異なりました。一方、昨年9月から生後6カ月以上に使えるようになったデュピクセントは、炎症、乾燥肌、かゆみ全てに関連するタンパク質IL-4、IL-13をブロックする作用があります」(大塚医師=以下同)

 成人を対象にした治験になるが、デュピクセントとステロイド外用薬を用いた群は、16週目で、世界的に頻用されるアトピー性皮膚炎評価指標EASIスコアにおいて75%達成率(75%改善)が68.9%だった。なお、プラセボ(偽薬)+ステロイド外用薬では23.2%。

「私が診ていた16歳の患者さんはステロイド外用薬でアトピー性皮膚炎がなかなか良くならなかった。デュピクセントを使い始めたところ、かゆみがなくなってかき傷が良くなり、6週間時点では皮膚のゴワゴワはまだ完全に改善しないものの、赤い湿疹がきれいになくなりました」

■まずは従来薬を正しく使う、それでもダメなら注射

 デュピクセントは注射薬だ。小児では体重によって打つ間隔や用量が異なる。5キロ以上15キロ未満では200ミリグラムを4週間に1回の投与となる。ただ、すべての小児アトピー性皮膚炎患者にデュピクセントが必要なわけではなく、7割くらいの患者は従来薬でコントロールでき、小学校卒業までには症状が消えた状態を維持できるようになる(=寛解)。

「アトピー性皮膚炎の基本は塗り薬です。しかし、その塗り方が間違えている。『アトピー性皮膚炎が良くならない』という患者さんに薬の塗り方を指導すると、半分以上が正しい方法を知りません。そして適量を適切な方法で塗ると多くの方で症状が改善します」

「適量・適切な方法」とは、人さし指の第1関節まで絞り出した量を、手のひら2枚分の面積に塗る。フィンガーチップユニットと呼ばれる。

「薄くすり込んでは効きません。ティッシュをつけると落ちないくらいベッタリ塗ります」

 さらに大事なのは、見た目が良くなっても薬の塗布をいきなりやめないこと。アトピー性皮膚炎の病態は三位一体と前述したが、見た目に症状はなくても、潜在的に炎症が残っている。炎症を完全に鎮めるため、間隔を空けつつも塗り続け、最終的には「ステロイドオフ」を目指す。

「私の場合、ステロイド外用薬を毎日塗るのは2週間程度、長くても1カ月です。その後は2日に1回、週に2回と減らしていく。きちんとルールを守ってステロイド外用薬を塗れば副作用は出ません。そしてこれまでは、そうした正しい治療でも症状が改善しない重症患者さんがいました。デュピクセントの登場で、小児でも新たに打つ手ができたのです」

 明日は、アトピー性皮膚炎の小児の治療がなぜ大事かに触れたい。

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