論文が世界で注目 胆道がんをほぼ確実に発症させない方法

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 胆道がんは非常に予後が悪いがんだ。発見された時にはすでに進行がんで手術が困難なケースが珍しくなく、たとえ手術ができても再発率が高い。この胆道がんに関する論文が発表され、注目を集めている。

 先日、消化器病学の分野で世界で権威のある医学雑誌「The Lancet Gastroenterologynibu&Hepatology」に、日本人が筆頭著者の総説論文が初めて掲載された。テーマは「膵・胆管合流異常と先天性胆道拡張症」だ。筆者である都立駒込病院・神澤輝実副院長は長年、胆道がん予防につながる治療の研究に力を注いできた。今回の論文では「膵・胆管合流異常」の治療が胆道がんの予防につながることに触れている。

 通常、膵管と胆管は十二指腸内で合流するが、十二指腸壁外で合流する先天性の形成異常がある。これを膵・胆管合流異常といい、胆道がんの発症率を高める。

「胆道がんの発症前に合流異常を発見すれば、胆道がんを予防できる。予防法が認知されれば、胆道がんの死者数の減少が期待できます」

■超音波検査の結果に注目

 膵・胆管合流異常は、胆道が拡張する「先天性胆道拡張症」と、拡張しない「非拡張型」に分かれる。

 拡張症では約半数が子供のうちに見つかり手術を受ける。残り半数も胆石や膵炎を起こしやすく、成人になってから発見されやすい。たとえそれらがなくても、健診の超音波検査で見つかる例もある。

 一方、発見されにくいのが非拡張型だ。自覚症状に乏しく、超音波検査では見つからない。MRIで膵・胆管合流異常が分かるが、だれにでも行えるわけではない。

「胆道がんの発症率は、拡張症で22%、非拡張型で42%。どちらも等しく胆道がんのリスクを上げますが、非拡張型の方が発症率が高いのは、発見が難しいことと関連していると考えられます」

 健康診断の範囲で、合流異常の非拡張型を見つけられないか――。神澤医師らが着目したのは「胆嚢壁の厚さ」だ。

 合流異常があると、膵液が胆管に逆流し、胆嚢壁に炎症が起こる。生まれてから何十年と胆嚢壁に炎症を繰り返すと、胆嚢の粘膜が過形成といって厚くなり(胆嚢壁肥厚)、その後がんに進展する。

「胆嚢壁肥厚なら健診の超音波でも明らかに分かります。今までは胆嚢壁が厚くてもそのままでしたが、胆嚢壁肥厚がある人にはMRIを行うようにすれば、合流異常の発見率が高まります」

 もちろん、「胆嚢壁が厚い」が「合流異常」や「胆道がん高リスク」とイコールではない。ただ、非拡張型のスクリーニング法としては現段階で唯一の方法だ。データはまだないが、神澤医師の経験では、胆嚢壁肥厚が認められた人にMRIを行うと、合流異常の非拡張型がしばしば見つかるという。 

「非拡張型が見つかりさえすれば、予防的に胆嚢切除術を行います。この手術はさほど難しくありません。胆嚢を除去しても、その後の生活に支障はあまり出ません」

 健診の結果に「胆嚢壁肥厚」を示す指摘があれば、MRIを受けるべき。胆道がん予防になる。すでに胆道がんを発症していても、早期発見になるかもしれない。

 なお、胆道がんには胆嚢がんと胆管がんがある。非拡張型で発症する胆道がんは、約9割が胆嚢がん、1割弱が胆管がんだ。胆嚢除去で発症率をゼロにできるのは胆嚢がんで、胆管がんのリスクは残っている。胆管も除去するかどうかは、1割弱という発症率の低さもあり、専門医の間で意見が分かれている。

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