末期がんからの生還者たち

村野武範さん<4>副作用で口が荒れ…食事は地獄の苦しみ

村野武範さん
村野武範さん(C)日刊ゲンダイ

「ステージ4の中咽頭がん」だった俳優の村野武範さんは、抗がん剤と放射線治療でがんを克服した。治療中は副作用との壮絶な闘いもあったという。

「放射線を始めて2週間すぎたあたりから、口内炎で普通のご飯が食べられなくなりました。口の中が荒れて痛くて噛むという動作ができないんです。おかゆのような流動食や缶入りの栄養ドリンクが退院の日まで続きました。でも、味覚はあったのでまだよかったですよ」

 口内炎は退院後も続き、しばらくは卵かけご飯を流し込む生活だった。うどんすら丸のみだった状態から、徐々に噛めるようになるまで3カ月以上かかったという。

「食事のたびに地獄の苦しみだったようで、女房いわく『涙を流して食べていた』そうです。しばらくは唾液が出にくくて口が乾くことはありましたが、今ではそれもほとんどありません。髪の毛も無事でしたし、吐き気なんてまったくなし。がんの診断を受けた東京の病院では体重が10~20キロ減るといわれましたが、5キロ減で済みました。『どこで何をやっても同じ』と言われた東京の病院にあのまま入院していたら、どんなことになっていたか……。考えるだけで恐ろしいです」

 現在は、年に2~3回、東北の病院でMRIとPET検査を受けている。それ以外には薬も制約もないという。

「生活で一番変わったのは、お酒をやめたことです。以前は365日飲んでいました。でも、たばこと酒は“がんのエサ”になるって言われてスパッとやめました。あとは体にいい食事を心掛けています。緑黄色野菜、キノコ、海藻、大豆製品、えごまや亜麻仁油を取り入れた料理が増えました」

 そんな村野さんが今回の経験で一番言いたいことは、セカンドオピニオン、サードオピニオンの重要性だという。

「1人の医者の言葉をうのみにしないで自分で調べてみてほしい。今の時代なら可能ですから。うちは女房が命の恩人ですけど(笑い)。一時はステージ4の中咽頭がんで声が失われ、せりふを言うこともできないだろうと覚悟していました。しかし、先進医療のおかげで歌えるようになり、万感の思いを込めて新曲の『ハマナス』をレコーディングしました。私の体験が、皆さまの参考になればと思っています」

(おわり)

▽村野武範さん(72歳) 1945年、東京生まれ。1972年、27歳のときにドラマ「飛び出せ!青春」(日本テレビ系)で熱血教師役を演じ、人気俳優となる。1988年、43歳で「くいしん坊!万才」(フジテレビ系)を担当し、3年間出演した。現在、39年ぶりとなるCDシングル「ハマナス」(クラウン徳間ミュージック)が発売中。

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