大人の発達障害に効果 リハビリプログラムを実施医が解説

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 成人の発達障害の「生きづらさ」解消に役立つとして、リハビリテーションプログラムが注目を集めている。

「働くビジネスマン」に特化したリハビリテーションプログラムを立ち上げ、治療の一環として実施しているのが「メディカルケア虎ノ門」(東京・虎ノ門)だ。

「うつ病などで休職中の患者に『実は発達障害』という人が多いことに気づいたのがきっかけです。当院の休職患者の2~3割は発達障害です」(五十嵐良雄院長)

 2013年に休職中の発達障害患者向けのプログラムを開始。そして翌14年、就労中の患者向けの「ピアサポートグループ『マンスリー・コムズ』」を開始した。働きながらでも受けられるように、月1回、土曜日に行っている。

 最大のポイントは「患者同士がサポートし合う場」である点だ。プログラムの対象を「児童期および思春期に発達障害の診断を受けていない成人」に限っていることとも関係している。

 発達障害は生まれつきの障害だが、成人になるまで診断を受けたことがない人は、発達障害自体は軽症だ。

「こういう人は『興味のあることには集中して取り組む』など疾患の特性から、学習面で高い能力を有していることが多い。だから学生時代は問題なく過ごしてきたが、社会人になって、対人関係などで不適応を起こしている」(五十嵐院長)

■不適応か減少

 その「不適応」にどう対処すればよいか? 医療関係者が「○○の時は△△すればよい」と一方的に伝えるのでは十分に対処しきれない。働くビジネスマンだから理解し合える「不適応」もある。患者同士が日々ぶち当たる「不適応」について経験や知恵を共有し、乗り越える術を身につけていくのだ。

 各回ごとに「空気を読む」「段取りを組む」「情報を整理する」などテーマが決まっている。前半1時間半は心理士ら専門家の解説、後半1時間半は患者同士7~8人が輪になっての話し合いという構成。前半で疾患についての理解を深め、後半で先に述べた「不適応を乗り越える具体的な術」を学ぶ。継続して受けることで「対人関係などのトラブルが減った」と話す患者は少なくない。

 発達障害においてリハビリテーションプログラムが占める役割は大きい。発達障害は発症メカニズムが解明されておらず、決め手となる治療法がないからだ。成人のADHDは2種類の薬が承認されているものの「これで治る」というわけではなく、アスペルガー症候群には薬がない。

「まずは本人、そして周囲が発達障害の特性を理解し、正しく対応することが、発達障害による不適応の解消につながります。生きづらさを感じる生活上の悪循環を断ち切れば、うつ病などの二次障害や併発を避けられます」(五十嵐院長)

 なお、「メディカルケア虎ノ門」のリハビリテーションプログラムは治療の一環なので、同クリニックの発達障害専門外来の受診が前提。初診は2時間ほどかけて面談や心理テストを実施するため、健康保険適用の診察料に加え予約料1万円がかかる。それ以外は、プログラムも含め、保険適用だ。

《成人の発達障害とは》

 アスペルガー症候群をはじめとする自閉症スペクトラム障害、ADHD(注意欠陥・多動性障害)、特定不能の広汎性発達障害がある。成人でわかる発達障害では、軽症のアスペルガー症候群とADHDをどちらも“薄く”持ち併せているケースが珍しくない。

 アスペルガー症候群ではコミュニケーション、社会性、想像力の問題が見られ、ADHDでは不注意、多動性、衝動性が見られる。

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