死亡者は熱中症の1.5倍 「低体温症」は室内でも起こる

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 日本海側で記録的な大雪が続くなど、寒波の猛威は収まりそうにない。朝晩の冷え込みもまだまだ厳しい。「低体温症」に気を付けたい。

 厚労省の人口動態統計によると、低体温症によって2010年以降は毎年のように1000人以上が亡くなっている。その数は熱中症の1.5倍に上るというから深刻だ。しかも、寒冷な屋外ではなく、7割が室内で低体温症に見舞われているという。

 江田クリニック院長の江田証氏は言う。

「恒温動物である人間の体温は、外気温にかかわらず一定範囲内に保たれています。そのため、寒冷な環境にさらされ続けると、体温を一定に保とうとしてどんどん熱をつくります。末梢血管を収縮させて体熱の放散を防いだり、筋肉を震わせて熱を発生させるのです。しかし、外気温などの影響でこの熱生産の働きが限界を超えてしまうと一気に体温が下がり、自律神経をつかさどっている体温調節のコントロールが失われてしまいます。そうなると、血液の循環や呼吸がうまくいかなくなるなどして、最終的には全身の臓器の機能が低下してしまうのです。亡くなるケースの大半は体温が28度を下回った場合だといわれています」

■室温を20度以上に保つこと

 冬に低体温症で救急搬送される患者は高齢者が多く、糖尿病や循環器疾患などの基礎疾患を抱えているケースが目立つという。

 高齢者は、熱をつくり出す筋力の低下や低栄養などの影響によって体内で熱を生産して体温を維持する機能が衰えている。寒さに適応する力が弱く、室内でも気温が低いと短時間で低体温症に陥るリスクが大きいのだ。また、低体温状態に慣れてしまったり、意識障害が表れることなどから自覚しづらい点も注意が必要だ。

 軽度の低体温症(35~32度)の場合は、室温を高くしたり、温かい物を飲ませたり、毛布をかけるなどで回復する場合があるが、中等度以上(32度以下)の低体温症の場合は、急激に体表面を温めるとショック症状を引き起こす危険がある。震えに加え、意識が混濁しているようならすぐに救急車を呼んだ方がいい。
何より低体温症を招かないような予防が重要だ。

「室内での低体温症の発症は、暖房をつけていないケースが多く見られます。寒い環境では低体温症になるリスクがあることを意識して、まずは室温を20度以上に保つようにしましょう。また、室内でも薄着は避け、首や頭部を温かく保つことが効果的です。汗は体温を急激に奪うので、汗をかいたらすぐに水分を拭いて着替えることも大切です。こまめに温かい飲み物や食事を取ることも効果的です。体の深部から温めることができるうえ、脱水の予防にもなります。さらに、意識して手足を動かすようにするだけでも体は温まります」

 アルコールの摂取は血行がよくなって体が温まる感じがするが、これはあくまで一時的な状態にすぎない。血行がよくなる=血管が広がるため、逆に熱は発散されてしまう。体内のエネルギー源がなくなれば体温は急激に下がるので、お酒を飲んでそのまま眠るのは禁物だ。

 マラソン大会やスポーツ観戦などの屋外でのイベント時はもちろんだが、室内でも低体温症は起こるということを忘れてはいけない。

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