末期がんからの生還者たち

胆管がん<2>手が付けられず2時間で手術終了と3日後に知り

西口洋平さん
西口洋平さん(提供写真)

 東京都足立区に住むサラリーマン、西口洋平さん(38歳)は2014年夏、これまでに経験のない体調の異変を感じた。

 最初は下痢である。不快な下痢が続き、67キロの体重が62キロにまで減った。

 下痢の色は白っぽく気味悪い。とくに肉など脂質が多い食事をとると、すぐにトイレに駆け込んだ。

「原因がわからず、市販の下痢止め薬を飲んでおりました。だが改善されません。消化器系でも悪いのかなと軽く考えていました」

 西口さんは、自宅近くのクリニックで胃腸の内視鏡検査を受診した。しかし、異常が発見されない。

 相変わらず下痢状態が続き、2度目の診察のとき、担当医師に「黄疸が出ています」と、告げられた。

 翌年の2015年2月に入って、紹介状を持って「東京逓信病院」(東京・千代田区)で精密検査を受診。「胆管がん」の確定診断を受けた。

■「おそらく12時間はかかるでしょう」

 胆管は、肝臓から十二指腸までの、肝臓で作られた消化液の通り道。胆管がんは、胆管内側の表面を覆う粘膜に発生する悪性腫瘍だ。

 同がんの自覚症状は、西口さんが経験したような、1つは目の白い部分などが黄色くなる「黄疸」である。

 2つ目は、これも西口さんが経験した便が白っぽいクリーム色になる。胆管ががんによって狭められ、胆汁が腸内に流れてこなくなることから、便の色が白っぽくなるのだ。

 このほか、胆管がんの症状に体重減少、発熱、かゆみ、食欲不振、倦怠感などがある。告知を受ける半年前ほどから西口さんに、「胆管がん」特有のシグナルが、相次ぎ発信されていたのだ。

「全国胆道がん登録調査報告=1988~97」(日本胆道外科研究会)によると、「胆管がん」の手術での5年生存率は、26%である。

 西口さんは診察室で担当医師から、今後の治療について説明を受けた。手術の後に抗がん剤治療というスケジュールだが、「難しい手術ですから、おそらくは12時間くらいかかるでしょう」と、予告された。

 妻や両親に見送られて手術室に入った。家族は、12時間の手術時間を考慮し、いったん自宅に戻った。ところが、すぐに病院から呼び出しを受けたという。開腹すると、胆管がんは腹膜やリンパ腺にも転移しており、手がつけられない。開いた腹部はすぐに閉じられたのだ。

 西口さんが、わずか2時間の手術を知ったのは術後3日目である。病期は末期の「ステージⅣ」だった。

「担当医師から説明を受けたとき、“ああ、私はこれで終わったな”と、覚悟しましたね」

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