子作り治療 最前線

精子の動きを障害する抗体が作られ受精しにくくなることも

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 不妊症の原因は男女半々の割合で見られるが、女性の不妊症の原因別頻度は原因不明を除くと主に次のような割合になる。①卵管因子30%②卵巣因子20%③子宮・頚管の因子10%④免疫因子5%。それぞれどんな病気が不妊に関係しているのか。「大宮レディスクリニック」(埼玉県)の宮田あかね医師(生殖医療専門医)が説明する。

「卵管障害は、卵子と精子の通り道である卵管が閉塞したり、癒着などで妊娠しにくくなっている状態です。クラミジアなどの性感染症や子宮内膜症などによって起こりやすくなります。不妊症の25~30%に子宮内膜症が合併し、子宮内膜症の人の30~50%に不妊が認められるといわれています」

 子宮は受精卵を迎えるために、排卵に向かって内膜が厚くなる。受精卵が来なければ厚くなった内膜は剥がれ落ち、月経として体外へ出される。子宮内膜症は内膜様の組織が他の場所に付着して、そこで病的な増殖が繰り返される病気だ。発症リスクは月経回数が多いほど高くなるので、近年の晩婚化(妊娠回数が少ない)によって罹患者は増えているという。

 月経不順を来す排卵障害は、急激なダイエットや精神的ストレスなどでも起こるが、最も多いのは排卵を調節するホルモンの分泌異常。多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)などの疾患だ。

「PCOSは、なかなか排卵しないなどの月経異常、血液検査でのLH(黄体化ホルモン)などのホルモン値異常、経腟超音波での卵巣の所見で診断します。多くは排卵誘発剤を使用することで排卵を促します。中には『インスリン抵抗性』が高いために糖尿病治療薬を併用することも。PCOSの原因は不明なところも多く複数の病因が考えられていますが、そのひとつに男性ホルモンの過剰もあります」

 子宮の障害では、子宮筋腫や子宮内膜ポリープなどによって受精卵(胚)の着床を阻害したり、子宮の異常収縮や血流障害が不妊の要因になる。子宮頚管の障害は、頚管ポリープや頚管粘液(CM)の質や量の異常。ポリープがあったり、正常なCMが多く分泌されないと、精子が子宮の奥まで泳いでいけないのだ。

「免疫因子は、何らかの免疫異常で精子を障害する抗体(抗精子抗体)が作られて受精しにくくなります。特に精子の運動を止めてしまう『精子不動化抗体』が高いと、人工授精で子宮に精子を注入しても妨害されます」

 きちんと治療をすれば40代でも妊娠は十分可能。あきらめないでほしいという。

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