子作り治療 最前線

10代から出産を意識すれば“35歳の壁”は越えられる

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「たくさん産め」「早く産め」「男と同じように働け」「きれいでいろ」「男に頼るな」「子育てもしっかり」「介護はしてもされるな」――。超高齢少子化社会の中で、女性たちはかつてないほど過度な要求にさらされている。

「高学歴になり、職を得て、出産適齢期を過ぎる頃になっても一生懸命働いています。若い女性を取り巻くこうしたライフスタイルの著しい変化が、気づいたときには不妊を招き、妊娠の妨げになっています。これは当事者である女性や医師ばかりでなく、社会全体で考える大きな問題です」

 こう警鐘を鳴らすのは、周産期学やウイメンズヘルスを専門にする「女性ライフクリニック銀座」(東京・銀座)の対馬ルリ子院長だ。

 対馬産婦人科医は、銀座と新宿で開院する傍ら、2003年に女性の心と体、社会との関わりを総合的に捉える「女性医療ネットワーク」を設立。15年にわたり全国約600人の女性医師や医療者と連携し、不妊予防治療やがん予防はもとより、女性の生涯にわたる健康アドバイスや啓発活動を展開している。

 出産は、母親の命を脅かすほど負荷がかかる一大事である。だからこそ、安全な妊娠、出産を実現するために、10代の頃から心の準備と体づくりをして、排卵や月経、女性ホルモンの仕組みなどの知識を知っておく必要がある。

 それをしないから、妊娠しようと思ったときはすでに適齢期を過ぎ、不妊という事態も起こってしまう。逆に言えば、若い頃から出産の準備をしておけば、人生設計の修正も利き、高齢出産となる“35歳の壁”を越えることが可能になる。

 たとえば、現役期間を少しでも長く続けたいと希望するプロのスポーツ選手。対馬院長は、出産が遅れがちなこうした選手たちからも相談を受け、現役引退後に無事、出産をさせている。対馬院長が言う。

「今、東京・丸の内のビジネス街では約10万人の若い女性が働いていますが、その約20%が痩せ形、つまり低栄養の女性です。いざ妊娠しようにも妊娠にとって重要な基本的な栄養素が不足しているのです」

 若い女性が気にするのは健康な体ではなく、痩せてスタイルを良く見せたいということばかり。そうした危うい栄養状態では、排卵障害を起こして妊娠もしにくいし、妊娠しても出産時にさまざまなトラブルを起こしかねないという。

「将来、出産を望むなら婦人科検診を受けるほか、栄養のバランスなど基本的な健康力を身につけることが大切です」

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