期待の新薬も登場! 今年の「インフルエンザ」傾向と対策

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 今年もインフルエンザの季節がやってきた。すでに都内の小学校では学級閉鎖が起きていて、その他の地域でも学級閉鎖が相次いでいる。昨年はインフルエンザワクチン株の選定が遅れ、ワクチンが品薄になり大きな騒動が起きたが今年はどうか? 「北品川藤クリニック」(東京・品川区)の石原藤樹院長に聞いた。

 9月に入り全国の公立学校でインフルエンザによる学級閉鎖が相次いでいる。東京・江戸川区内の小学校では2年生のクラス32人のうち14人が欠席。11日から14日まで学級閉鎖となった。

 山形県内の保育施設では園児130人中10人が集団感染したほか、栃木・矢板市乙畑小学校3年生が学年閉鎖、茨城・水戸市上中妻小学校では2年生の1クラスが、愛媛・松山市の市立湯山小学校では2年・4年の2クラスが、福岡・福岡市城南区の中学校でも1クラスが学級閉鎖となった。

「確認されたインフルエンザウイルスのほとんどはA型。B型、C型に比べて症状が激しいのが特徴で、38度を超える高熱や肺炎をふくむ深刻な呼吸系の合併症、のみ込むのがイヤになるほどの喉の痛み、関節痛や筋肉痛などを起こすことがあります。A型はウイルスの形がどんどん進化し続けるため、免疫が機能しづらいという特徴があります」

 つまり、10月から始まるワクチン接種前にインフルエンザらしいインフルエンザが散発的に流行しているということだ。その理由はハッキリしないが、海外旅行者の急増と無関係ではなさそうだ。

 訪日外国人数は2013年に初めて1000万人を突破して以来増え続け、2017年にはおよそ2900万人まで到達。政府は2020年における訪日外国人の計画目標を4000万人とする一方で日本人の昨年の海外旅行者数は1789万人。日本のグローバル化が一段と進んでいる。

「日本ではインフルエンザは冬の季節病ですが、南半球では日本の7~8月が最も寒い冬。この時期がインフルエンザ流行のピークです。シンガポールなどの赤道直下の国は南半球の影響を受ける5~8月と北半球からの影響を受ける12~3月に流行のピークを迎えます。つまり、こういうエリアから続々と入ってくる、あるいは戻ってくる人が増えている日本では、インフルエンザは夏休み明けの9月を含め一年中流行する感染症になりつつあるのかもしれません」

 インフルエンザは一度感染すると免疫反応による抗体ができて、その後1年程度は同じ型のインフルエンザは発症しなくなる。インフルエンザワクチンはこの免疫の性質を利用し、ウイルスから取り出して作られた不活化ワクチンにより、インフルエンザに感染しづらくなるというものだ。

 インフルエンザワクチンの生産はまず、今年の冬に流行しそうなインフルエンザ4株をWHO(世界保健機関)の推奨を受けて春先に決定。それをもとにワクチン生産に入り、10月から接種する。このシステムがこの先も妥当かどうか。いま一度考える必要がありそうだが、昨年はその過程でトラブルがあり、ワクチン量が一昨年の7割程度しか生産できず、各地でワクチン争奪戦が起こった。

「今年は量を確保したとは言っていますが、13歳以上は接種1回を厳守するよう推奨しています。ピークに向けてある程度の在庫を確保したい思惑があるのかもしれませんが、受験などで必要な人は早めに打っておく方がいいかもしれません」

 ただし、昨年は生産するワクチン株の選定が二転三転したにもかかわらず、「期待通りのワクチン効果が得られなかった」との声もあった。

「今年のインフルエンザワクチンはWHOの推奨通りで昨年のものとA型は1株、B型1株を変えています」

■細胞に感染させないタイプの新薬が登場

 今年のインフルエンザ対策で最も変わった点はこれまでとは違った機序を持つ新薬が登場することだ。

「ウイルスの増殖を直接抑える、今までになかったタイプの薬が『ゾフルーザ』です。1日2回、5日間飲み続けるタミフルなどと違って、1回飲むだけでいい。タミフル、リレンザ、イナビル、ラピアクタといった4種類のインフルエンザ薬は、細胞内で増殖したウイルスが細胞外に広がるのを抑えるタイプでしたが、新薬は、細胞に感染させないタイプの薬です」

 A、B型ともに使え、12歳から64歳のインフルエンザ患者1440人を対象にした第三相試験では症状が出ている期間は53・7時間とタミフルと同程度だが、ウイルスが体の中から消える期間はタミフルの3分の1の24時間だった。

「その分、他人にうつす例が減ることが期待されています。家族内や学校、職場でのウイルスの広がりを抑えられる可能性があります。副作用はプラセボ並みでタミフルよりも低いとされています」

 ただし、新薬の評価は市場に出てから数年はかかる。まずは例年通り、手洗い、マスク、十分な睡眠と栄養摂取に気をつけることだ。

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