患者が語る 糖尿病と一生付き合う法

糖尿病と告げたら医師は「それだと手術が厄介になる」と

Ⅰ型の場合、カロリー制限はどこまで厳密?
Ⅰ型の場合、カロリー制限はどこまで厳密?(C)日刊ゲンダイ

 糖尿病でインスリンを打っていることが、ほかの何かに思わぬ影響を及ぼす場合がある。

 僕の左手首には、ずっと前からコブのような突起があった。ガングリオンと呼ばれる良性の腫瘍で、関節から出るゼリー状の粘液が内部にたまる原因不明の病変である。

 良性とはいえ見苦しいので、定期的に太い注射針で中身を吸い出してもらっていたのだが、何度やってもすぐに再発してしまう。医者の話だと、かなり大きくなっているので、いずれは神経を圧迫して手に障害が出る恐れもあるという。この際、粘液の通り道になっている皮膜を根元まで取り除いたほうがいいという話になった。

 神経が集まっている部位での細かい作業になるため、できれば全身麻酔をかけさせてほしいと医者は言った。なまじ意識があると、手術中に腕が動いてしまったりして危険だというのだ。

 そういうことならと了承したのだが、入院するに当たって、1型糖尿病患者であることを初めて告げたら、医者は「それだと話が厄介になりますよ」と言い出した。

 仮に手術中に血糖値が低くなっていたとして、それがインスリンの作用によるものなのかどうか判別がつかないのが困るというのだ。

 そこで、当日は内科医も立ち会った上で、頻繁に血糖値を測定しながらのオペとなった。たかが手首のコブを取るのに、随分おおげさな話になったものだ。おかげで手術は無事に終了したのだが、全身麻酔を使用した関係で、前後3日間の入院生活を余儀なくされた。それはやむを得ないとして、不服だったのは、糖尿病患者だからという理由で、無条件にカロリー制限食にされてしまったことだ。1型の場合、そこまで厳密なカロリーコントロールは必要ないはずなのに。

 あれから12年、ガングリオンは再発していないが、何かと不自由を強いられるのは間違いないので、入院やら手術やらはできる限り避けたいものだと常日頃思っている。

平山瑞穂

平山瑞穂

1968年、東京生まれ。立教大学社会学部卒業。2004年「ラス・マンチャス通信」で日本ファンタジーノベル大賞を受賞。糖尿病体験に基づく小説では「シュガーな俺」(06年)がある。

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