病歴15年、1型糖尿病患者であることにもすっかり慣れたとはいえ、「本当に不便だな」と思うことは今でも折々にある。
たとえば、ふと気が向いたときに間食をするというのが難しい。お祭りなどの屋台で目についたものを気ままにつまみ食いするのもそうだ。
もちろん、その都度血糖値を測ってしかるべき量のインスリンを打てば、できなくもないのだが、食事以外の飲食に対するインスリンの適正な量をとっさに見定めるのは、言うほど簡単ではない。たいていは打ちすぎてしまって、あとでさらに補食をする羽目になる。
運動も厄介だ。僕はもう7年間も、日課として6キロのランニングを続けている。1型患者の場合、運動をしたところで症状が改善されるわけではないから、これは治療のためというより体重コントロールと運動不足解消のためだ。
しかし、激しい運動をすれば、当然血糖値はぐっと下がる。ランニング後に低血糖に陥って補食するなど日常茶飯事だし、低血糖を避けるために事前に適量補食しておく場合もある。結果として摂取カロリー量が見込みより増え、かえって体重が増加してしまうという本末転倒な結果になることすらある。膵臓がまともに機能している人は、こんな苦労とは無縁なのだなと思うと、今さらながらうらやましい気持ちにもなる。
現在の僕はかなり良好な血糖コントロールを維持できているが、それは常に十分な量のインスリンがあり、いつでも補食できるという環境を前提としたものだ。
仮に今、災害が発生して、避難所生活を余儀なくされたら? 運よくインスリンは携行していたとしても、食べるものが限られていたら、低血糖が怖くてうかつに打つこともできないのでは?
しかし、その時はその時だ。この病気はどうせ一生自分について回るのだから、実際に起きてもいないことを今から心配してもしかたがない。そう考えるのが、せめてもの知恵というものだ。
患者が語る 糖尿病と一生付き合う法