性感染症最前線

尖圭コンジローマ<2>原因は180種類以上のHPV

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 性器や肛門に、先のとがった小さなイボがたくさんできて、鶏のトサカやカリフラワー状に成長する「尖圭コンジローマ」。原因は皮膚や粘膜の微小な傷から侵入する「ヒトパピローマウイルス(HPV)」で、現在、180種類以上の遺伝子型が見つかっている。

 遺伝子型によって何が違うのか。性感染症専門施設「プライベートケアクリニック東京」(新宿区)の尾上泰彦院長が説明する。

「人の体にできるイボ(ウイルス性疣贅=ゆうぜい)は、すべてHPVが原因です。しかし、遺伝子型によって感染しやすい場所やイボの見た目が違います。大きく皮膚に感染する『皮膚型』と性器の粘膜などに感染しやすい『粘膜型』。また、将来、がんを起こす能力の違いから『高リスク型』と『低リスク型』に分けられます」

 尖圭コンジローマの原因となるのは粘膜型低リスク型で、HPV6型とHPV11型が約90%を占めるとされる。そして、粘膜型高リスク型は子宮頚がんや陰茎がんの原因になることが多く、中でもHPV16型とHPV18型は子宮頚がんを発症している20~30代の女性の約70~80%から見つかっている。しかし、20~30代女性のがんで最も多い子宮頚がんの発症率が10万人当たり40~70人に比べて、陰茎がんの発症は10万人当たり1人未満と極めてまれだ。

 では、子宮頚がんワクチンがあることはよく知られているが、尖圭コンジローマを防ぐワクチンはあるのか。

「国内で承認されているHPVワクチンは、2価ワクチンと4価ワクチンの2種類です。2価は子宮頚がんの原因となる16型と18型のワクチンで、4価は尖圭コンジローマの原因となる6型と11型を加えた4つの型に対するものです。ただし、国内では男性への接種は承認されていません」

 また、その効果だが、勘違いしてはいけないのは、ワクチンは感染予防を目的とするので、すでに感染している部位の基底細胞(表皮の一番下)からHPVを排除する効果はないということ。つまり、新規感染は防げても再発予防にはならない。セックスデビューをしていない10代前半の女性に、ワクチン接種が勧められるのはそのためだ。

「オーストラリアで26歳以下の女性に4価ワクチンを公費負担にしたデータが出ています。それによると、ワクチンを接種した女性だけで尖圭コンジローマの減少が見られただけでなく、26歳以下の女性をパートナーにもつ男性の尖圭コンジローマも減少しています。4価ワクチンの効果は明らかです」

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