独白 愉快な“病人”たち

全身脱毛症と闘うアイドルpippiさん 今も頭にステロイドを

pippiさん
pippiさん(C)日刊ゲンダイ

 鼻毛もなくなっちゃったので、スギ花粉が直接入ってきてこの時季は大変です(笑い)。

 異変が起こったのは2017年11月です。ふと気づいたら右耳の後ろの髪がなくなっていて、「あ、また円形脱毛だ」と思いました。じつはそれが初めてではなく、過去に2回経験していました。小さい頃から大好きな「ツインテール」(耳より上で髪を2カ所にまとめて結ぶ髪形)を毎日していたので、“ツインテールのやりすぎかな”と軽く考えていたんです。

 実際、それまではしばらく結ばずにいれば元に戻っていました。でも2017年は違っていてなかなか治らず、左耳の裏も同じように脱毛が……。そのうちに襟足から上の方向にうわーっと勢いよく毛がなくなっていったので、慌てて近所の皮膚科に駆け込みました。

「円形脱毛症」と診断され、まずは冷却療法というマイナス温度の冷気を当てる治療が行われました。「気絶している毛根に刺激を与えて毛を生やす」というのです。併せて飲み薬と塗り薬も処方され、3~4カ月ほど通いました。でも、治るどころか広がるばかり……。「ウチではもうできることはありません」と言われ、脱毛科のある大学病院を紹介されました。

 それが今から約1年前のことです。大学病院ではステロイド治療を試みることになりました。まず医師に勧められたのは、1週間入院してステロイド点滴を打ち続けるというものでした。

 でも、私にはその選択はできませんでした。なぜならそのころ、膝の疲労骨折からやっと復帰したところだったんです。4カ月もお休みしてしまったので、これ以上、ファンの方に心配をかけたくありませんでした。

 なので入院はせずに、通院でステロイド注射を打つ治療をすることになったんです。頭全体で数十カ所、通院のたびに毎回打ちました。

 それでも髪は抜け続け、昨年9月には髪が全部なくなりました。その後、まつげや眉毛も抜けてしまって、今は鼻毛まで……。女性は「全身脱毛しなくて済むからいいね」なんて思う人がいるかもしれませんが、欲しい毛もあるじゃないですか(笑い)。描いた眉毛はダンスで汗をかくと流れてしまうし、付けまつげも毎日大変です。

■全身脱毛症でも「人生を楽しんでいる」と発信したい

 今も3週間に1回の割合で通院して、頭にステロイド注射をしています。その効果なのか、まばらにうっすら毛が生えてくるんですよ。でも、色素がない白い毛なんです。しかもものすごく細くて柔らかい弱々しい毛なので、5ミリぐらい生えては抜けてしまって、生えそろうことがない。

 原因は、血液検査などをしてもわかりませんでした。ストレスだとよくいわれますが、医師によると「自己免疫疾患のひとつ」だそうです。

 アイドルとしてもひとりの女子としても、髪が生えないのはとてもショックです。多くの人がそうであるように、なるべく隠していたい……そう思いました。でも、あえて公表した理由は、大きく2つあります。

 ひとつはファンの方に申し訳ないと思ったこと。というのも、ステージで転んだときにウィッグを必死で押さえてごまかそうとしていた私を見て、「見ているのがつらかった」という書き込みがSNSで飛び交っていたのです。それまでも、ジョークで“ちょいハゲ”をネタにしていたんですけど、「そろそろ発表のタイミングだな」と感じました。

 もうひとつの理由は、「人に元気を与えたい」からです。「アイドルなのに全身脱毛症。でも、いろんなウィッグで人生を楽しんでいるよ」と発信したくなったんです。ただ、ライブ後の楽屋でさっそうとウィッグを外して、たまった汗を豪快に拭けるかといえば、まだそこまで振り切れていませんけどね(笑い)。

(聞き手=松永詠美子)

▽ぴっぴ 2月4日、島根県生まれ。2007年に結成された女性アイドルグループ「エレクトリックリボン」に15年に加入。メンバーチェンジを繰り返しながら、18年から4人態勢のセルフプロデュースユニットとして活動している。4月25日、5月29日、6月19日と3カ月連続で「高円寺HIGH」(東京・杉並区)で自主企画ライブ「ワンダランリボン」を開催する。

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