血液1滴で13種類のがんをチェック いつから受けられる?

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 いま注目を集めているのが、血液1滴で複数種類のがんを調べられる検査。研究にかかわる国立がん研究センター臨床研究支援部門バイオバンク・トランスレーショナルリサーチ支援室室長の加藤健医師(消化管内科医長)に話を聞いた。

■どういう検査?

 採取した血液からマイクロRNAを調べて、がんがないかを調べる検査だ。マイクロRNAとは、細胞間の情報伝達の役割を担う微小な核酸。

「人間の細胞の中には2600種類のマイクロRNAが存在するといわれており、そのうち1000種類が血液をめぐっています。がんの人は、健康な人と異なる種類や量のマイクロRNAが見られ、どの種類かで、がんの種類も特定できます」

■調べられるがんは?

「胃・食道・肺・肝臓・胆道・膵臓・大腸・前立腺・膀胱・卵巣・乳がん、肉腫、神経膠腫の13種類になります」

■マイクロRNAはどれくらいの種類を調べる?

 たくさんの数を調べるほど精度が上がる。しかしコストも上がる。

「大腸がんであれば、3種類のマイクロRNAを調べればいいことが分かっています。しかしがんによって、どれくらいがベターかが違います。現在は研究段階にあります」

■検査のポイントは?

 ひとつは、血液検査という簡単な検査で複数種類のがんを調べられることだ。

「がんの検査の中には、痛みを伴ったり時間がかかったりするものが少なくなく、それががん検診の受診率が伸びない一因になっています。しかし血液検査であれば、受ける人の負担が少ない」

 もうひとつは、感度・特異度の高さだ。

「マイクロRNAの検査では、Ⅰ~Ⅳ期に関係なく高い感度は変わりません。また、たとえば大腸がんは肛門の近くにあるものは感度が高く、大腸の奥の方にあるものは感度が低いのですが、マイクロRNAでは感度は同じです」

 腫瘍マーカー、画像検査、自覚症状どれをとっても、がんが大きくならないと異常として表れない。しかし、マイクロRNAなら高い感度で異常を発見できる。だから膵臓がんのように、発見時は進行していることが多いがんも、マイクロRNA検査なら早期発見が期待できる。
<この検査を受ければ、ほかの検査は必要がない?>

 それは違う。あくまでも、マイクロRNAの検査はスクリーニング検査になる。

「確定診断には、生検や細胞診などの病理検査が必要です」

 マイクロRNA検査で「陽性(がんがあるかもしれない)」と出たが、病理検査では陰性と出た――。こういう場合は、定期的なフォローアップが行われる。

「がんのリスクがどれほど高いかによってフォローアップの期間は変わります。家系にがんが多く、高いリスクが考えられる時は、短い期間で検査を行います」

■今後、調べられるがんは13種類以上に増える?

「13種類でも十分に多いと思いますし、がんの種類を増やしていくより、まずは、患者数が多いがん、早期発見が難しいがんに絞って早期の実用化を目指しています」

■いつから受けられるようになる?

「今年でプロジェクトは5年目になります。現在は、患者さんから採取した新鮮な血液を早い段階で分析する前向きな臨床研究が行われています。今後は、母体にがん患者が少ない実際のがん検診で、どれくらいがん患者が見つかるかの研究を行います。実用化するのは5年後くらいでしょうか」

■がん以外にも応用される?

「マイクロRNAは体の中の変化で放出されるので、がんに限らず、アルツハイマー型認知症や脳梗塞などさまざまな病気の発見に役立てられるだろうと考えています」

 実用化されたらいち早く受けたいと切に思う。

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