進化する糖尿病治療法

「間食」には2つのメリット うまく取り入れるコツは?

おやつにはカカオの含有量の高いチョコレートを
おやつにはカカオの含有量の高いチョコレートを(C)日刊ゲンダイ

 みなさんは、間食を取っているでしょうか?

 間食というと、「太る」「砂糖の取り過ぎ」などネガティブな印象を抱いている方もいるかもしれません。

 しかし、私は間食を取ることに対して賛成の立場。糖尿病で治療を受けているわけではなく、営業職などで体をよく動かす、夕食の時間が遅い、お腹がすいて夕食を食べすぎてしまう……といった場合は、間食を有効活用していいと考えています。

 たとえば、ある40代男性は、自宅とオフィスが離れていて、通勤に2時間近くかかるので、平日は毎朝6時台の電車に乗らなければなりません。朝食は5時半で、パンとコーヒーの決まったメニューです。

 出社時間は、決まった始業時間より少し早い8時。

 彼の仕事はデスクワークが中心で、13時半くらいまでパソコンと向き合いっぱなしです。その時間になるとオフィス近隣の定食屋がすいてくるので、昼食に出掛けます。

 繁忙期を除き、たいてい18時近くには退社。自宅で風呂に入り、20時半ごろに夕食を取ります。

 彼の場合、朝食から昼食までの時間が8時間。昼食から夕食までの時間が7時間。空く時間がだいたい均等ですが、サッと済ませたい朝食はどうしても簡単な内容にせざるを得ず、昼食時は空腹でつい「ご飯大盛り」を頼みたくなってしまう。 また、夕食も、現代のビジネスパーソンにしてはそう遅い時間ではありませんが、翌朝が早く、11時前には寝たいことを考えると、消化の良いメニューを少量食べる程度にしたい。

 そこで、彼は9~10時と16~17時の2回、カカオの含有率が高いチョコレートを1個、食べるようにしています。すると空腹が抑えられる。

 この男性のような間食の取り方は、悪くはないです。理由は2つあり、ひとつは、食べ過ぎを抑えられること。もうひとつは、血糖値の急上昇を回避でき、吸収を抑えられること。空腹時間が長く続いた後に食事をすると、血糖値が急上昇し、急降下します。これが血管にダメージを与えるため、血糖値の変動はあまり大きくしないようにすべきです。

「1日3食、規則正しい食事を」と言われるのですが、一般的な会社勤めの人には難しい。通勤時間の関係で朝食をかなり早く取らなければならなかったり、残業が当たり前の職場では夕食が21~22時を回り、昼食から時間が経ってしまったりということは、よくあるでしょう。むしろ、「朝食7時、昼食正午、夕食18時」といった理想的な食事スタイルを持てる人がどれだけいることか。

 だからこそ、間食をうまく取り入れてほしいのです。

■「好きなものを好きなだけ」はNG

 ただし、すべての人に間食が適しているわけではありません。自分は、間食を取るべきかどうか。まずは、自分の食事時間を確認してください。多くの方は昼食から夕食の間が空くでしょうから、そのちょうど真ん中くらいの時間に間食を取る。習慣化する必要はありません。「今日は夕食を18~19時くらいに取れる」「たまたま昼食がボリューミーだったのでお腹がすいていない」といった時は、間食を取らなくてもいいのです。

 間食の内容にも注意です。好きなものを好きなだけ、ではカロリー過多になりかねないのでNG。チョコレートやナッツ類、ヨーグルトやチーズなどを少量、食べることがおすすめです。

 特にチョコレートは、カカオポリフェノールやテオブロミンなどの含有成分が健康に役立つという研究結果が近年、発表されています。

「アーモンド入りチョコレートを1日8粒、2週間食べたところ、便秘女性の排便回数が増えた」「閉経した女性がカカオポリフェノールを継続摂取したところ、高血圧、高血糖、高コレステロールを予防できる可能性があると分かった」など。

 カカオの含有率が高いチョコレートが複数のメーカーから販売されているので、それらをご自身に合った形で活用するのもいいですね。

 職場で仕事中に何かを食べるのはちょっと……という方は、牛乳をたっぷり入れたコーヒーや紅茶などもいいですよ。くれぐれも「おいしくて、チョコレートをつまみ過ぎた」にならないようにしてください。

坂本昌也

坂本昌也

専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。

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