ストレス社会の生き延び方

家族のサポートが不可欠 夫がうつに! その時、妻は…

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 夫がうつになった時に不可欠なのが家族のサポート。では、どのようなことに気をつけてもらえばいいのか?

「一番良くないのは、『原因を聞く』です。本人が言わない限り、原因のほとんどは仕事です。そしてその原因のほとんどは、どうしようもできないこと。だから本人は言いたくない。逆に不安やつらさ、体の状況などは理解してほしい。なので、症状を聞いてもらい、そのとき、どうしたいのかも聞いてもらう。無駄なアドバイスは不要です」

 医者にかかるかについても注意を払いたいところだ。

「受診を勧められた時、多くの場合は拒否しないものです。ただ、医者に行くことに抵抗がある場合は、無理に受診する必要はありません。様子を見ながら、期限を決めて、それに従うのがいいでしょう。メンタル系の受診に抵抗を持つ人は、メンタルクリニックを受診するより、めまいなら耳鼻科、おなかの調子が悪いなら消化器科など、症状に合った科を受診する。そして一緒に受診してもらい、検査が一段落した時点で、メンタル系を受診した方がいいのかを医師や看護師に聞いてもらう。自分だけで悩まず、医療従事者を巻き込むことで、心の負担が軽くなります」

 その後の会社との付き合い方は?

「多くの場合、人はストレス源から離れることで悩みやストレスは減り、メンタルヘルス不調は改善します。なので、基本的には仕事を辞めれば、たいていの場合、その症状も病気も治ります。一方、その時に『住宅ローンがあるから』『次の仕事が見つからない』『近所の人にどのような顔をすればいいの?』と仕事から距離を置くことを許さない家族があることも。この場合は簡単には治りません。なので、最悪の場合に備えておくことが大切です。治療により会社を休むことなく調子が戻ればいいのですが、休まざるを得ない場合は、最長何カ月休めるのか、いつまでなら給与が出るのか、その後の傷病手当(健保組合からの補償はいくらでいつまでか)などを知っておくことです」

 その上で対策を練ればいいわけだ。

「私の元へ相談に来られたケースでは、奥さまがご主人に通院を勧めたところ、本人も同意し、最初からメンタルクリニックに受診されました。ご主人は、新しい職場の上司に他人のミスをかぶらされたり、自分だけがたくさん仕事をするようになっていて、疲れて仕事を続けていく自信がない、辞めたいと言っているとのことでした。その後、主治医から『薬を飲み始めて、もうちょっと働いてみましょう』と睡眠導入剤と軽めの抗うつ剤を処方されて勤務を継続したところ、奥さまのサポートもあり、徐々に回復したとのことでした。仕事を辞めなくてよかったと奥さま。ご主人に寄り添いながら治療に当たったのが功を奏したようです」

 労働者の6割が何らかのストレスや悩みを持っている現代。だからこそ家族に味方になってもらう必要がある。

(構成・中森勇人)

武神健之

武神健之

東京大学医学部大学院卒。一般社団法人日本ストレスチェック協会代表理事。年間1000件の健康相談、ストレス・メンタルヘルス相談を行う。著書に「職場のストレスが消える コミュニケーションの教科書 上司のための『みる・きく・はなす』技術」(きずな出版)などがある。

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