スマホ手放せない人は注意 ヘバーデン結節の正しい対処法

指を酷使する人や、40代以降の女性に出やすい
指を酷使する人や、40代以降の女性に出やすい(C)日刊ゲンダイ

「指の第1関節が急に腫れて、変形してきた」「ズキズキした痛みのせいで夜も眠れない」。そんな症状に襲われたら「へバーデン結節」を疑った方がいい。指先を酷使する人や40代以降の女性に出やすいこの症状は原因不明の変形性関節症で、炎症期は強い痛みがみられ、他の指にも同様な症状が出る場合があるという。どんな治療が行われるのか? 日本整形外科学会認定専門医で「みずい整形外科」(東京・祐天寺)の水井睦院長に聞いた。

 出版社に勤める60代の男性は、1年ほど前から指先の異変に気がついた。左手の中指の第1関節が突然、横方向に腫れてきたのだ。

 最初は指が熱っぽくジンジンした痛みがあり、指の動きも悪くなったように感じた。すぐに治るだろうと思っていたが数カ月経っても一向に症状は改善しない。「いずれ指だけでなく全身の関節が腫れて動かなくなるのではないか」と不安に駆られたが、最悪の診断が怖くて誰にも言えず1年ほど怯えて過ごしたという。別の病気で総合病院に通い始めたのを機に思い切って整形外科で診てもらったところ、主治医から「これはへバーデン結節といって病気でなく老化です」と言われたという。

「へバーデン結節は英国の内科医が発見したことから名付けられた変形性指関節症です。変形性とは老化現象を意味します。男性の主治医が『老化です』と言ったのはそのせいでしょう。へバーデン結節は爪のすぐ下の第1関節(DIP関節)が赤く腫れたり曲がったりして痛みを伴うのが一般的です。親指にも表れることがあり、徐々に指の動きが悪くなり、痛みのために強く手を握ることができなくなる場合もあります」

 人によっては第1関節の近くに水ぶくれのような透き通った出っ張りができることがある。これをミューカスシスト(粘液嚢腫)と呼ぶ。痛みはしばらくすると自然と治まるが、変形だけが進行する場合もある。

「手をよく使う人がかかりやすいといわれますから、パソコン、スマホのヘビーユーザーの将来が心配です。突き指をした人がその後遺症として突き指した指だけに症状が表れる場合もあります。原因はよく分かっていません。40代すぎの女性に多く表れることから、女性ホルモンの減少に関わりがあるのではないか、ともいわれています」

 なかには関節リウマチと勘違いする人がいるがそうではない。関節リウマチでも指の変形は起こるが、関節リウマチは全身疾患であるため、膝など指以外にも変形が起こる点で変形性指関節症とは違う。変形性指関節症は指だけに起き、しかも特定の関節だけに発症する。その代表がへバーデン結節なのだ。

「変形性指関節症はなんらかの原因で指の軟骨がすり減ることで起こります。軟骨は骨と骨とがぶつかり合わないよう、クッションの働きをしています。それがすり減ることで骨同士がぶつかり、骨にとげのようなものができて、炎症や痛みが発生するのです。そのまま使い続けると骨が変形します。さらに時間が経つと骨同士がくっつくため、腫れや痛みは消えますが、骨は変形したままになるのです」

■治療は痛みの抑制と安静と固定

 ちなみに関節リウマチは関節の滑膜炎症と骨の破壊を伴う自己免疫疾患である。遺伝的背景のある人が、喫煙などの環境要因が重なり発症する。手首や手の指が腫れる、左右対称に腫れる、朝起きると手がこわばるなどの症状が表れるが、これも変形性指関節症とは違う。X線写真を見ると関節リウマチは独特の姿をしているうえ、血液検査などで診断できる。

 一方、へバーデン結節の確定診断は先に述べた症状に加え、X線写真で行う。関節の隙間が狭くなり、関節が壊れたり、骨棘があったりすればへバーデン結節と診断される。

「へバーデン結節の治療の基本は痛みの抑制と安静と固定です。まず、テーピングや装具で患部である指の第1関節を安静固定します。それと並行して消炎鎮痛剤の塗り薬や湿布薬、飲み薬などで痛みを鎮めます。それでも痛みがつらい場合は骨棘を切除する手術が検討されます。しかし、手術をすれば数カ月は手が使えなくなります。痛みは先ほどお話ししたように自然に治りますから、患者さんには手術のメリット・デメリットをよく理解したうえで選択するようにお話をしています」

 指の腫れや痛みに気づいたら最初から接骨医院やマッサージに行くのではなく、整形外科で診てもらうこと。関節リウマチなど別の病気との鑑別にはX線撮影や血液検査が必要だ。下手な自己診断で間違った治療をすると治らないばかりか症状が悪化することもある。注意したい。

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