令和時代 健康長寿の新常識

飼い主の健康長寿を支える ペットを飼うことのすごい効果

犬を飼っている人は糖尿病や高血圧が少ないという報告も
犬を飼っている人は糖尿病や高血圧が少ないという報告も

 ペットフード協会の推計によると、日本全国で飼われている犬や猫は約1855万匹。「ペットブーム」はすっかり定着したといってもいい。今や「家族の一員」ともいわれているペットだが、飼い主の健康長寿にもプラスになるという報告が相次いでいる。

 スウェーデンの研究チームが340万人を対象に12年間にわたって医療記録を分析したところ、一人暮らしで犬を飼っている人は、飼っていない人に比べて心血管疾患で死亡するリスクが36%低く、家族と同居している人でも15%低かった。また別の研究では、犬を飼っている人は糖尿病や高血圧が少ないという報告もある。

■運動、ストレス、腸内細菌…

 順天堂大付属順天堂医院前院長で心臓血管外科教授の天野篤氏は言う。

「論文の著者は『犬の散歩などで飼い主が体を動かす機会が増えたり、犬との触れ合いが孤独感やストレスを癒やし、健康にいい影響を与えている可能性がある』としています。実際、心臓に負荷がかかり過ぎない程度の運動は心臓のバックアップ機能を高めます。また、ストレスは心臓にとって大敵です。ストレスを受けて交感神経が優位になりアドレナリンが大量に分泌されると、心拍数を増加させて血流を増やす効果と、血管を収縮させる効果で極端に血圧を上昇させます。その結果、心臓の負担が増えて心不全を来すこともあるのです」

 ペットは心臓と血管を守るのだ。

 ペットを飼っていると、ぜんそくやアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患を減らすという報告もある。

 スウェーデンの研究チームが4匹ほどのペットに囲まれた7~9歳の子供がいる家庭を対象に調査を行ったところ、子供が乳児期からペットを飼っていた家庭は、まったくペットに触れていなかった家庭に比べ、アレルギー疾患の発症が約16%低かったという。

 東京医科歯科大名誉教授の藤田紘一郎氏はこう説明する。

「幼少の頃からペットと接していると、さまざまな細菌やバクテリアと接触する機会が多くなります。それによって免疫機構を鍛えられ、アレルギーが発症しづらくなるのです。免疫力を左右するのは腸内細菌で、種類と数が多ければ多いほどサポート効果がアップします。人間の腸内細菌の種類は生後3年間でほぼ決まるといわれ、それまでに体内に取り込んだ細菌がIgA抗体とくっついて定着することがわかってきました。子供の頃からペットと接することが大切なのです」

 ペットを飼っている家の子供は、アレルギー疾患だけでなく自閉症やうつ病のリスクが減るという報告もある。ペットは健康長寿につながるのだ。

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