突然、陰のう(タマ袋)から下腹部にかけて、激しい痛みが表れる病気があります。陰のうが徐々に腫れてきて、吐き気と嘔吐(おうと)を伴います。あまりの痛さに、ときにはショック状態に陥ることもあります。
中には激しい腹痛や腰痛として感じる人もいますが、このような症状があったら我慢してはいけません。受診が遅れると、大事な睾丸(こうがん=精巣)を失う危険が高まるからです。その病気は「睾丸回転症」です。「精巣捻転症」とも呼ばれます。
すべての世代の男性に発症する可能性がありますが、とりわけ多いのは25歳以下の若い世代です。小児では自分で症状をうまく説明できないので、単に腹痛を訴えたり、不機嫌になるだけのこともあるので注意が必要です。
陰のうに激しい痛みと腫れが起こるのは、腹部と睾丸をつないでいる「精索(せいさく)」と呼ばれるヒモ状の部分がねじれてしまうからです。精索には、睾丸に血液を送っている血管や精子の通り道である精管が入っていますので、ねじれてしまうと血流が途絶えてしまうのです。
そのため発症から長く放置していると、睾丸が壊死してしまう危険性があります。壊死してしまえば睾丸を摘除しなくてはいけません。ねじれた精索を元に戻す治療には、陰のうの外から手を使って元に戻す「用手整復術」もありますが、そんなに時間はかけられません。うまくいかなければ「緊急手術」に踏み切り、陰のうを切開して精索を元に戻します。
発症から6時間以内に手術すれば、90%は睾丸機能の回復が望めます。それが12時間以上経過すると50%、24時間以上も経過してしまうと90%以上は睾丸が壊死してしまうとされます。睾丸回転症の原因は、睾丸が生まれつき陰のうに固定されていない、もしくは固定がゆるい状態にあることです。それで特に、成長期は睾丸が急に発達するので、何かの拍子に精索がねじれやすくなるのです。
原因が構造的な異常なので、たとえ用手整復術で回復したとしても、一度発症していると再発しやすくなります。手術で治す場合には、ねじれた精索を元に戻すとともに予防的に睾丸を陰のうに固定する処置を行います。このとき同時に発症していないもう片方の睾丸も固定します。
睾丸回転症は、ほとんど片側の睾丸に発症します。夏よりも冬に発症しやすく、右より左の睾丸の発症の方がやや多い(約65%)という特徴があるとされています。陰のうの痛みには十分注意してください。
専門医が教える パンツの中の秘密