普段じっくりと自分のペニスを観察することはないかもしれません。しかし、セックスやマスターベーションのときは勃起しているので自身の形状はよくお分かりだと思います。そんなとき「おや」と、ペニスにできた“しこり”に気づく人がいます。その多くは「性病ではないか」と疑い、大騒ぎの末に受診することになります。
ペニスにしこりができる病気は、性感染症では「梅毒」が代表的です。しかし、性感染症でない「陰茎硬化性リンパ管炎」という良性の病気もあります。どちらも痛みもかゆみもありません。
まぎらわしいですが、梅毒のしこりの場合は「初期硬結(こうけつ)」といって赤く腫れたように硬く盛り上がり、やがて中心部に潰瘍を形成して「硬性下疳(げかん)」という状態になります。
一方、陰茎硬化性リンパ管炎のしこりは赤くはならず、皮膚や粘膜がそのまま盛り上がったような見た目をしています。触るとコリコリしています。よくできる部位は、陰茎包皮内や陰茎本体、冠状溝(カリの部分)ですが、まれに亀頭部や陰嚢(いんのう)内にできることもあります。
形状はできる部位によって異なりますが、スジ状、蛇行状、樹枝状、球体状、米粒状などとさまざまです。原因は不明ですが、皮膚や粘膜の下を通るリンパ管内腔にリンパ液のうっ滞や凝固などが起こり、その部分が肥厚して硬いコリコリしたしこりになるとされます。過度や長時間のセックスやマスターベーションなどの物理的刺激が誘因になるといわれますが、私は関係ないと考えています。女性でも、同じような硬化性リンパ管炎が小陰唇の内側にできることがあります。
陰茎硬化性リンパ管炎は突然できますが、焦る必要はありません。通常、2~4週間で閉塞したリンパ管が再開通し、自然消失するからです。中には半年ぐらい長引く人もいますが、基本的には経過観察でかまいません。
泌尿器科など専門とする診療科の医師でないと、リンパ管を切開したり、針で刺したりする処置をする場合があります。しかし、一時的な効果はありますが、またすぐリンパ管がうっ滞し、腫れてくるので無意味な処置となります。日常生活に支障がなければ、リンパ管切除などの外科治療をする必要はありません。
私の場合は患者さんに、入浴時にペニスの根元をマッサージしてリンパ液の循環を良くするように指導しています。それをやったからといって改善するとはいえませんが、患者さんは安心してくれます。デリケートな部位ですので、気持ちの問題もあるのです。
専門医が教える パンツの中の秘密