病の克服は患者に聞け

脊柱管狭窄症<1>手術時間が通常の3倍超「10時間」に延びた

曽我陽三さん
曽我陽三さん(C)日刊ゲンダイ

 痛みやしびれ。進行すると歩くことさえも困難になる「脊柱管狭窄症」は、中高年の間で急増している病気のひとつ。主な要因は加齢とされ、背骨の中を通る脊柱管(神経の通り道)を構成する骨や靱帯の肥厚、椎間板の突出などで脊柱管が圧迫される病気だ。背骨のずれ(すべり症)などによっても脊柱管が圧迫され、痛み、しびれなどの症状を起こす。

 大手製薬会社の調査(2010年)によると、40代以上で推定240万人がこの病気にかかっているという。

 昨年9月、都内の病院の「脊柱脊髄外科」で、「脊柱管狭窄症」の手術を受けた「一般社団法人・日本ビジュアル著作権協会」(東京・飯田橋)の曽我陽三理事長(70)もそのひとりだ。

 同病気の手術所要時間は、「通常1~3時間」(日本脊髄外科学会)といわれるが、曽我さんの場合は違った。

 手術台に腹臥位(うつぶせの姿勢)になったままおよそ10時間。手術補助の看護師が、「全身麻酔の効果時間が切れてしまうのでは」と心配するほど、この種の手術では記録的な長時間の手術を受けたという。

 同病院の名誉のために言っておくと、手術時間がこれほど延びたのは同病院の技術が劣っているわけではもちろんなく、むしろ高いにもかかわらず、曽我さんが手術の機会を引き延ばしたことが原因だ。一般的な脊柱管狭窄症のほか、「すべり症」も手術のカテゴリーに入っていたという。

 背骨は、脊柱管を囲むように上から頚椎、胸椎、腰椎等で構成されている。ところが背骨の間にある椎間板(主にクッションの役割)などが変形すると、背骨も異常を起こす。子どもが公園で遊ぶ滑り台のような形に変形し、脊柱管を圧迫してしまう。これが「すべり症」だ。

 曽我さんにも10年ほど前から「脊柱管狭窄症」や「すべり症」の兆候も出始めていた。

 腰周辺に軽い痛みを覚えるという症状の黄信号が点滅するようになり、専門医の診察を促していた。

 だが、幼少の頃、盲腸手術以外に病院の世話になったことがないという曽我さんは、強健な体力の持ち主だった。

 学生時代は空手部(有段者)に所属し、「腹筋、500回、うさぎ跳び500回!」といった地獄特訓の中で毎日、体を鍛えてきた。

 飲食街で3人ほどのチンピラに囲まれた時、ものの2、3秒で全員を倒したという武勇伝も枚挙にいとまがない。

 腰痛も、蚊に刺された程度と軽く思っていた。しかも、たまたま腰痛の症状が出た10年前、仕事に忙殺されていた。著作権裁判を巡る弁護士たちと連日の打ち合わせなどで、帰宅する時間をも惜しみ、会社の狭いソファで寝泊まりしていた。専門医の診察など、眼中になかったという。

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