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ビタミン豊富な新玉ねぎ うま味と栄養分を逃さない扱い方

新玉ねぎの極上オニオンスライス(手前)とステーキ
新玉ねぎの極上オニオンスライス(手前)とステーキ(C)日刊ゲンダイ
旬の恵みを味わう(2)新玉ねぎ

 新玉ねぎは収穫後、できるだけ早く召し上がった方が味もよく、豊富な栄養を逃さずにいただけます。疲労回復効果が期待できるビタミンB1、新陳代謝を促進するビタミンB2、抗酸化作用のあるビタミンC、骨を強化するカルシウムなどが主な栄養分です。加えて辛味成分の硫化アリルには血液をサラサラにするだけでなく、免疫力を高める働きも期待されています。

 今回はオリーブオイルで炒ったじゃこを上に振りかけたオニオンスライスと、厚切りにした新玉ねぎをバターで焼くステーキです。

 オニオンスライスは繊維を断ち切るように薄く切り、短時間で氷水にさらすことがポイントになります。長い時間、水につけたり、絞ったりしてはいけません。せっかくのうま味も栄養分も逃してしまううえ、シャキシャキとした食感も損なうからです。

 炒ったじゃこはペーパータオルを敷いた密封容器に入れ、冷蔵庫で1週間は保存可能です。ご飯や茹でた野菜にかけても結構ですし、そのまま酒のつまみにもなります。

 オニオンスライスの上にのせるじゃこを削り節に替えれば和風サラダになりますし、オニオンスライスと刺し身をドレッシングで和えればカルパッチョとしても召し上がれます。

 厚切りにしたステーキは、新玉ねぎならではの春の甘さを存分に味わえます。

 この時季ならではの新玉ねぎを使って、バリエーションに富んだ料理をお楽しみください。

■オニオンスライス

《材料》
◎ちりめんじゃこ  1カップ
◎オリーブオイル  大さじ3
◎新玉ねぎ  1個
◎醤油  大さじ1と2分の1
◎米酢  大さじ1

《作り方》
 ちりめんじゃことオリーブオイルを合わせてフライパンに入れ、中火で混ぜながら、均等に火が通るように、カリカリになるまで炒める。ペーパータオルに広げ、余分な油を切る。新玉ねぎは皮をむき、縦半分に切り、繊維を断つように極薄に切り、氷水に1分間さらす。さらに2回、氷水を替え、計3回さらしたら平ザルにあげ(写真下)、ペーパータオルで水気をおさえる。器に盛り、カリカリのじゃこをのせ、醤油と米酢を合わせたタレをかけていただく。

■ステーキ

 醤油にすりおろしたにんにくを加えたら冷蔵庫に入れておく。新玉ねぎ1個の皮をむき、横半分、厚さ1.5センチ程度に切る。熱したフライパンにオリーブオイル大さじ1を加え、新玉ねぎを並べ、中火の弱の火で蓋をしてゆっくり焼く。上下を返したら、白ワイン大さじ2を加えさらに焼く。しんなりして、香ばしい焼き色がついたら塩、白胡椒、バターを加え、火を切って器に盛る。冷蔵庫で寝かせたタレをかけたら、上から細ネギの小口切りを散らす。

▽松田美智子(まつだ・みちこ)女子美術大学非常勤講師、日本雑穀協会理事。ホルトハウス房子に師事。総菜からもてなし料理まで、和洋中のジャンルを超えて、幅広く提案する。自身でもテーブルウエア「自在道具」シリーズをプロデュース。著書に「季節の仕事 」「調味料の効能と料理法」など。

氷水を替え、計3回さらしたら平ザルにあげる
氷水を替え、計3回さらしたら平ザルにあげる(C)日刊ゲンダイ
褐色に色づいたメラノイジン抗酸化、免疫向上作用

 新玉ねぎの新とは新鮮の新。普通の玉ねぎは日持ちを良くするため収穫後、1カ月ほど風にあてて乾燥させる。だから表面が褐色になっている。これに対して、新玉ねぎは、早めに収穫した玉ねぎを乾燥させず、そのまま出荷したもの。ちょうど今くらいの春先、店頭に並ぶ。白くて、みずみずしく、皮が薄く、辛味が少ない。だからサラダなどで生食するのに向いている。

 玉ねぎの層構造は、植物学的にいうと葉っぱが肥厚して積み重なったもの。ラッキョウ、ニンニク、チューリップ、ユリなどはみんなこの仲間。ここに養分をためているわけだが、玉ねぎの場合、光合成で作られた糖分をそのまま蓄えている。だから玉ねぎは甘いのである。

 ちなみに、糖分を連結して蓄えたものが、米、小麦、とうもろこしなどのデンプンだが、連結してしまうと甘くなくなる。一方、玉ねぎは包丁で切ると涙が出てくることからわかるように、揮発性の辛味成分をたくさん含んでいる。これはもともと虫などに食われないための植物の知恵だったのだが、人間はこの辛味も玉ねぎの風味として楽しんでしまった。加熱すると辛味成分は飛ぶので、玉ねぎを炒めたり、焼いたりするとよけいに甘味が増す。そして玉ねぎを炒めると褐色に色づくのは糖とアミノ酸が反応してできるメラノイジンが生成するため。このメラノイジンは、抗酸化作用、活性酸素除去、発がん物質の消去、免疫の向上など機能性食材としての可能性を秘めているので研究が進められている。

▽福岡伸一(ふくおか・しんいち)1956年東京生まれ。京大卒。米ハーバード大医学部博士研究員、京大助教授などを経て青学大教授・米ロックフェラー大客員教授。「動的平衡」「芸術と科学のあいだ」「フェルメール 光の王国 」をはじめ著書多数。80万部を超えるベストセラーとなった「生物と無生物のあいだ」は、朝日新聞が識者に実施したアンケート「平成の30冊」にも選ばれた。

※この料理を「お店で出したい」という方は(froufushi@nk-gendai.co.jp)までご連絡ください。

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