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豊富な栄養と春の薫りをいただく グリーンピース下処理と茹で方

グリーンピースを使った卵とじと豆ご飯
グリーンピースを使った卵とじと豆ご飯(C)日刊ゲンダイ
旬の恵みを味わう(3)グリーンピース

 グリーンピースは、成熟していないエンドウマメを収穫したもの。さやから取り出した種子のことです。見事なひすい色をしていて風味がよいのが特徴ですから、まさに今が旬、春を味わえる食材です。

 今回はグリーンピースを使った豆ご飯と、グリーンピースの卵とじの2品です。

 いずれも下処理と茹でる際にポイントがあります。さやから取り出したグリーンピースは薄い塩水に入れ、浮いた豆は取り出します。スカスカの豆を取り除き、水分を補うためです。あらかじめさやから取り出してある豆を使用する場合は、より水分を補う必要があるだけに、長い時間、15分ほど浸してから使うのがコツです。もうひとつのポイントは、さやも一緒に茹でること。その方が風味がグンとよくなるからです。

 茹でたグリーンピースは、茹で汁に漬けた状態のまま、冷蔵庫で2~3日保存できます。サラダに加えたり、煮物のあしらいに使ったりもできますし、ダシ汁、酒、塩で味を薄く調えて、くず粉で軽いとろみをつければ、ひすい豆としても召し上がれます。

 グリーンピースは余分な脂肪の吸収を防ぐ食物繊維が飛び抜けて豊富なうえ、老化抑制、免疫力増進につながるタンパク質、過剰な塩分を体外に排出するカリウム、疲労回復効果が期待できるビタミンB1などが豊富に含まれています。豆ご飯には免疫力アップ効果のあるβグルカンを含むエノキダケも加えました。

 豊富な栄養を摂取すると同時に、春の薫りを存分に堪能してください。

■豆ご飯

《材料》 
◎グリーンピース  さや付き500グラム
◎塩  大さじ1+小さじ2
◎水  適宜+1リットル
◎米  2カップ
◎酒  大さじ3
◎エノキダケ 2分の1パック(石つきを除き、長さ3センチに切りほぐす)

《作り方》
 グリーンピースをさやから外し、深めのボウルに水(適宜)と塩(大さじ1)を加えた中に入れて少し置き、浮いた豆は取り除く。さやを5つ分くらいよく洗ったら、水を切る。鍋に水(1リットル)と塩(小さじ2)とさやを入れて煮立てたら、水を切ったグリーンピースを加え、紙蓋をして弱火で約5分茹でる(写真)。そのまま火を切り、室温になるまで冷ます。

 米をといだら、10分浸水させて、15分水切り。グリーンピースの茹で汁2カップ弱と酒を合わせ、塩で味を調えたら、米を入れて強火で煮る。煮立ったら火を弱め、鍋中の上下を返し、蓋をして7~8分で炊き上げる。水気を切ったグリーンピース1カップ分とエノキを加え5分蒸らし、大きくまぜていただく。

■卵とじ     

 グリーンピースの茹で汁をこしたものを2分の1カップとダシ1カップを合わせて煮立てる。酒大さじ2を加え、味を調えたら弱火に。卵2個のカラザを除いて白身を切りながらといたら、高めの位置から加えて大きくひと混ぜ。茹でたグリーンピース2分の1カップを加えて火を切り、好みの半熟に仕上げる。

紙蓋をして弱火で5分
紙蓋をして弱火で5分(C)日刊ゲンダイ
メンデルの法則を生み出した免疫システムの重要素材

 子供の頃、なぜか私はグリーンピースが苦手で、チャーハンやピラフに入っているのをいちいちつまみ出して捨てていた。プラスチックみたいな人工的に見える緑色と、あまり味のない食感が嫌だったのだろう。今にして思えば、たいへん罪なことである。なんせグリーンピースは生物学者にとってリスペクトしてもしすぎることのない最重要の実験材料だったからである。

 ちょうど日本でいうと明治維新が始まる少し前、オーストリアの修道院の司祭グレゴール・メンデルは、エンドウマメ、すなわちグリーンピースを使って実験をしていた。豆にシワのある系統とない系統をかけ合わせるとシワのないものができる。これを自家受粉すると次の世代ではシワのないものとあるものが3:1で出現する。有名なメンデルの法則である。遺伝が何らかの物質的な媒体(今で言う遺伝子)によって運ばれ、また優性と劣性(正式には顕性と潜性)の組み合わせによって数学的な法則が成り立つ。

 しかしこの先進的な研究は認められることなく、メンデルは失意のうちに死んだ。メンデルの研究が評価されたのは20世紀になってから。一方、メンデルは実験結果が自分の数学的モデルに合うよう、データを少しお化粧(悪く言えば捏造)していた疑いも持たれている。

 さて、食材としてのグリーンピースは、やや脇役的ではあるが栄養成分的には主役級である。

 まず良質のタンパク質を含む。タンパク質は、免疫システムの重要素材、抗体(免疫グロブリン)の原料となる。また小ぶりながら食物繊維も豊富。食物繊維は整腸作用とともに悪玉腸内細菌の排出にも一役買う。コロナ禍は一向に終息が見えないが、しっかり栄養を取って体調を維持したい。

▽松田美智子(まつだ・みちこ)女子美術大学非常勤講師、日本雑穀協会理事。ホルトハウス房子に師事。総菜からもてなし料理まで、和洋中のジャンルを超えて、幅広く提案する。自身でもテーブルウエア「自在道具」シリーズをプロデュース。著書に「季節の仕事 」「調味料の効能と料理法」など。


▽福岡伸一(ふくおか・しんいち)1956年東京生まれ。京大卒。米ハーバード大医学部博士研究員、京大助教授などを経て青学大教授・米ロックフェラー大客員教授。「動的平衡」「芸術と科学のあいだ」「フェルメール 光の王国 」をはじめ著書多数。80万部を超えるベストセラーとなった「生物と無生物のあいだ」は、朝日新聞が識者に実施したアンケート「平成の30冊」にも選ばれた。

※この料理を「お店で出したい」という方は(froufushi@nk-gendai.co.jp)までご連絡ください。

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