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血液と「貧血」<3>高齢者は食べても鉄欠乏性貧血を起こしやすい

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 貧血について、「二次性(症候性)貧血」についても、少し述べておきましょう。

 何か他の病気が起因して生じる貧血を「二次性貧血」といいます。

 主な原因として、各種がん、慢性感染症(結核、細菌性心内膜炎、骨髄炎など)、腎臓病、肝臓病、脾機能亢進症、甲状腺機能低下症やアジソン病(慢性副腎皮質機能低下症)などの内分泌性疾患、そして関節リウマチなどの膠原病が挙げられます。

 しかし読者の皆さんはまず高齢者の貧血も知っておく必要があります。

 高齢者は足元が弱くなっており、運動神経も低下しています。そうした高齢者が貧血になると、目まいなどで自宅や路上で転倒するリスクが高くなります。思いがけないケガで膝、腰を痛めかねませんから、高齢者の貧血は要注意なのです。

 しかも高齢者の貧血は、ひとつの原因によるものは少なく、原因が複数あることが多いのです。

 高齢者の貧血は、身体活動性の低下が招くことが多いのですが、この他にも多くの理由があります。

 まず栄養障害、慢性腎臓病(腎不全)、慢性炎症、消化器のがんや、MDS(骨髄異形成症候群)などが代表的なものでしょう。

 そのうち、身近な栄養障害について詳しく言いますと、高齢者は食べても、栄養分の吸収が悪くなることが第一の原因です。栄養障害は血液中のアルブミン濃度が低いことで分かりますが、鉄やビタミンが容易に欠乏するので、鉄欠乏性貧血や巨赤芽球性貧血(ビタミンB12不足)を起こしてしまうのです。

 さらに、高齢者は足と同様に歯も悪くなっていますので、食事摂取量が不十分なことも貧血の要因となります。

 特に一人で暮らしている独居高齢者は、食事を作ることが面倒であったりして、日々の食事量が少なくなっています。

 特例ですが、胃腸の病気で腸や胃を切除されている高齢者もおられます。

 このような人では、ビタミンB12(動物性食品)や鉄分の吸収が悪くなります。

 注意したいのは、心不全に貧血が合併するケースがしばしば見られることです。さらに腎不全を伴うこともあります。

 高齢者の貧血はこのように、複数の要因が関係していることが多いのです。血液検査で貧血以外に白血球、血小板に異常があれば、血液などの病気も疑うことが肝要です。

東丸貴信

東丸貴信

東京大学医学部卒。東邦大学医療センター佐倉病院臨床生理・循環器センター教授、日赤医療センター循環器科部長などを歴任。血管内治療学会理事、心臓血管内視鏡学会理事、成人病学会理事、脈管学会評議員、世界心臓病会議部会長。日本循環器学会認定専門医、日本内科学会認定・指導医、日本脈管学会専門医、心臓血管内視鏡学会専門医。

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