世界的なファッションデザイナーの山本寛斎さんの命を奪ったのは、急性骨髄性白血病でした。享年76。報道によると、今年2月22日から闘病されていて、亡くなったのは今月21日。5カ月での急逝です。
「オレの生き方、どうだ?」
病床に駆けつけた異母弟の俳優伊勢谷友介さん(44)はそう聞かれると、「凄いです。世界のファッションに早くから挑戦して、イベントの演出家として大きなショーを現実にしたことも」と偉大な兄へのあこがれを語ったといいます。
弟の言葉に世界的奇才は、小さくうなずいたとか。どこまでも自分の人生をまっとうし、満足感があったのかもしれません。
競泳の池江璃花子さん(20)が、国立競技場で来年の五輪に向けてメッセージを発信したのは、その2日後でした。白血病を克服した元気な姿が話題を呼んでいます。
2人を結ぶキーワードが白血病です。何が明暗を分けたのでしょうか。白血病は、大きく4つに分けられます。がん細胞が骨髄系の骨髄性かリンパ球系のリンパ性かで2つ。それぞれに急速に増殖する急性とゆっくり増える慢性があって、4つです。
山本さんを襲った急性骨髄性白血病は、俳優の渡辺謙さん(60)も31年前に発症しています。1年の抗がん剤治療で回復し、5年後の再発も乗り越えています。タレントの吉井怜さん(38)も20年前にこの病気が発覚。骨髄移植を経て現在に至っています。
Dr.中川 がんサバイバーの知恵
池江璃花子と山本寛斎を分けた明暗…白血病は年齢がカギ
発症年齢の中央値は60歳
急性骨髄性白血病は、いろいろな要素によって「予後が良好なタイプ」「中間型」「不良型」に分類。それを左右するのが、年齢と全身状態、合併症の有無です。一般に60歳以上だと、予後が悪くなりやすく、山本さんの発症は76歳。この年齢だと、移植が難しいと思われます。
移植には、強力な前処置を行うフル移植とそれより軽い処置で済ませるミニ移植があって、フル移植はせいぜい60歳、ミニ移植でも65歳が限度なのです。
年齢的にほかの持病もあったでしょうから、そういうことが重なって、発症から5カ月での最期となったのでしょう。急性白血病では、成人の8割が骨髄性で、発症年齢の中央値は60歳。急性骨髄性白血病を成人で発症すると、残念な転機となるケースが少なくないのが現状です。
一方、池江さんが克服した急性リンパ性白血病は、成人の2割、小児の8割を占めます。池江さんは発症時、18歳で、15歳以下の小児ではなく、ハイティーンですが、このタイプの白血病は、抗がん剤が効きやすく、ほかに比べると治りやすいのです。特に小児なら、治癒率は8~9割で、そのうち7割近くは移植せずとも抗がん剤で治ります。
私も60歳。新型コロナウイルスと同様に、60歳以上であることは、白血病の予後を悪くする大きな要因なのです。