病気を近づけない体のメンテナンス

脳<下>病気を招く右脳の衰えは運動とハーブティーで予防

ハーブティーがオススメ
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 脳機能の低下は、「認知症」「うつ病」「自律神経失調症」「依存症」といった脳の病気の発症につながる。いまは「NIRS(ニルス)」という検査法で脳の血流の変化や血管の反応を調べることができ、脳のどの部分が活性化しているか、低下しているかが分かる。それによって脳機能の低下を防ぐ方法や習慣も分かりつつある。

 そのポイントのひとつが「左脳と右脳の活性化のバランス」だ。左脳は、言語に関わる読み書きの機能や計算の機能が集積している。右脳は、注意力や集中力を発揮したり、体を動かしたりする空間に関する機能が集中している。がん・感染症センター都立駒込病院・脳神経外科の篠浦伸禎部長が言う。

「脳の使い方に得手不得手があったり、活性化の強い部分があったりするのは個性として大切なことですが、あまりに偏りがあると、脳のバランスが崩れてしまいます。人はさまざまな手段を講じて脳機能低下の最大の要因であるストレスに対処しています。しかし、脳のバランスが崩れていると、その取れる手段の幅が狭くなるのです」

 たとえば、通常左脳だけを使っている人は、コミュニケーション力が下がり、悩みを相談することが難しかったりして、うまくストレスを発散することができず、内へとこもってしまいがち。実際、うつ病の人は右脳の反応が異常なことが多いという。また、強いストレスがある自律神経失調症の人は、右脳の血管の反応が異常になり、座っているだけでも血流が低下していくという。

 なぜ、右脳が弱るのか。右脳は空間の広がりや高さを認知したり、体のバランスを取ったりする機能も集中する。右脳が外部からの強いストレスを受け続けると、不安に関係するホルモンが長時間分泌され続け、交感神経も過剰に刺激される。結果、右脳が疲弊してしまうのだ。

「年をとるほど右脳の機能は低下します。その理由のひとつは運動する機会が減るからです。デスクワークなどで左脳ばかりを使い、あまり体を動かさない人も同じです。便利になった現代社会では、左右の脳のバランスが崩れやすく、右脳が弱りやすい環境なのです。そこで、右脳を手っ取り早く使うこと=活性化できる方法が『運動習慣』といえるのです」

■「レッドクローバー」で右脳が活性化

 特に勧められるのは、脈拍が1分間に110~120を超えない範囲で、軽く汗ばむ程度の「有酸素運動」。具体的には、速足でのウオーキングやジョギング、サイクリング、水中ウオーキング、水泳など。週3回以上、1回につき30分以上行うのが理想だ。

 運動は右脳を活性化させるだけでなく、全身の血流を増やすので、脳の細かい血管の血流が増加し、脳全体の活性化にもつながる。健康な高齢者が有酸素運動を行うことで認知機能や注意力が改善したり、パーキンソン病を発症した人の症状が改善したという報告もあるという。

 また、運動することで脳内のドーパミンやノルアドレナリンといった脳機能維持に欠かせない「神経伝達物質」が増加することも分かっている。運動によって、不安やうつ状態が改善するという報告もあるという。

「もうひとつ脳を活性化させる方法として、私が注目しているのは飲み物の『ハーブティー』です。中でも健康効果が最も科学的に証明されているのは『レッドクローバー』という種類のハーブです。イソフラボンを多く含み、抗がん作用、骨粗鬆症の予防、更年期症状に有効であることが報告されています」

 そこで篠浦部長自身、NIRSを用いてレッドクローバーによる脳の血流の変化を調べてみた。すると12人中8人に右前頭葉の「血流上昇」、4人に右前頭葉の「酸素飽和度の上昇」が見られたという。いずれも共通するのは右側の前頭葉で、右脳が活性化したわけだ。

 なぜ、右脳が活性化するのか。レッドクローバーを愛飲している人の症状で一番改善するのは「便秘」だといわれているという。

「私の推測では、右脳と消化管が密接に関係していることが原因だと考えています。右脳は言語との関わりが少ないぶん、生存に関する体の機能や情動、本能といった動物的な機能との関係が強くなります。胃腸などの消化管の動きも、動物的な機能に属すると考えられます。ですから消化管の動きがよくなると、それと密接に関係している右脳も活性化するのではないかと思われます」

 メカニズムは、まだはっきり分からないが、ハーブティーの愛飲習慣も試してみてはどうか。

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