AIが築くクスリの未来

特殊な医療用語を識別して音声を文章化する技術を実用化

写真はイメージ
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 人工知能(AI)は薬の分野でも取り入れられ、活用されつつあります。一口にAIといっても細分化されていて、前回は、画像によって調剤ミスや投薬ミスをなくすことで医療安全に貢献する事例を紹介しました。

 AIは「ある特徴をもとに機械が自ら判別を行う」というプログラムです。AIを学習データによって大別すると、特徴をある程度、人の手によって整理したデータ(構造化データ)から見つけ出すものを「機械学習」と呼び、特徴を機械が自動で見つけ出すものを「深層学習」と呼びます。AIには機械学習と深層学習の2種類があるのです。

 深層学習は「ディープラーニング」や「ニューラルネット」などとも呼ばれ、画像、動画、音声といったこれまで系統だてて特徴を見つけ出すことができなかったデータ(非構造化データ)から、特徴を見つけることができるようになった画期的な技術です。これによって、AIの応用や社会実装が一気に進んできました。

 非構造化データの一種である音声に関しても、医療の分野でAIの応用が進んでいます。

 医療者は、カルテや薬歴といったさまざまな医療関連の記録をしなければなりません。これに「スピーチ・トゥ・テキスト」という音声入力が活用され始めているのです。

 スマートフォンなどでも用いられている技術で、医療分野では、特殊な医療用語を識別できたり、記録を取らなくてもよい部分(ノイズ)を除去する機能が強化されたものが使われています。また、逆に書かれた文章から音声を合成する「テキスト・トゥ・スピーチ」という技術も、音声説明の自動化に活用されています。

 こうした技術の向上は著しく、人が話しているのか、合成された音声なのかの区別がつかなくなる日も、そう遠くない将来にやってくることでしょう。

神崎浩孝

神崎浩孝

1980年、岡山県生まれ。岡山県立岡山一宮高校、岡山大学薬学部、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。米ロサンゼルスの「Cedars-Sinai Medical Center」勤務を経て、2013年に岡山大学病院薬剤部に着任。患者の気持ちに寄り添う医療、根拠に基づく医療の推進に臨床と研究の両面からアプローチしている。

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