科学が証明!ストレス解消法

能力を伸ばす極意とはプロセスを丁寧に褒めること

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 テレワークや外出自粛をする機会が増え、お子さんがいる家庭では、子供たちと接する機会も増えているのではないでしょうか? 

 子供と共有する時間が増える―――となれば、褒めたり、叱ったりする機会も増えると思うのですが、子育てをする上で留意してほしいことが、コロンビア大学・ミューラー教授の「能力を褒めることは子供のやる気をむしばむ」という研究結果です。能力を称賛した生徒と、努力を称賛した生徒に、より難しいテストを行ったところ、前者は成績を落とし、後者は成績を伸ばしたといいます。

 子供が勉強やスポーツ、好奇心を満たそうと一生懸命がんばっているときは、結果を褒めるのではなく、プロセスを褒める。「テストで90点を取って○○くんはすごい!」「ホームランを打ったから今日はご褒美をあげる」ではなく、「毎日、本を一生懸命読んでいたし、少しの時間だったとしても勉強していたんだから○○くんはすごい!」「ご飯を食べた後も、がんばって素振りをしていたのはすごくかっこよかったよ」など、努力していた姿を褒めることに意味があるんですね。「○○ちゃんは、いつも好成績を取ってすごいザマスね!」と褒めても、変にプライドが高くなるだけで、子供を社会的リスクから遠ざけるわけではないとも指摘されています。

 また、カリフォルニア大学サンディエゴ校の「褒められて育った子供は困難に直面するとズルをする傾向が強い」という研究結果も興味深いでしょう。この実験は中国東部で行ったのですが、300人の子供に数字カードを使って推理ゲームを行い、続けていく上で、頭の良さを褒めた子供と、一切褒めない子供に分けました。

 途中、あえて研究者が席を外して、その動向を見守ると、褒めた子供たちの方がカードの数字をのぞき見たりしていたという結果になったそうです。これは、褒められた経験から「また褒められたい」という気持ちが募り、手段を選ばなくなったのではないかと推測されています。ただし、この実験結果が日本人に当てはまるかは一概にはいえません。

 日本人は他国に比べると自尊心が低いことが明らかになっています。日本青少年研究所が、日本、米国、中国などの中高生を対象に「自分はダメな人間だと思うか?」と聞いた調査では、「ダメだと思う」と答えた学生が、米国と中国は20%未満だったのに対し、日本はなんと約60%にも上っています。それほど日本人は自己評価が低い傾向にある。だからこそ、プロセスを丁寧に褒めてあげると子供の自信につながり、さらには子供たちが考えながらスキルを磨く“種”になるのです。

 プロセスを褒める際に、子供たちに「どうやったのか」「どんな工夫をしてみたのか」について聞くと、より効果的です。子供たち自身が、何を考えて、どう工夫して、どんな結果になったのかを整理する一助にもなるからです。

 端的に褒めるのではなく、丁寧に褒める。褒める方にも想像力が必要です。


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堀田秀吾

堀田秀吾

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

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